2017年6月26日(月)
異常加速
安倍改憲の危険な本質
安倍晋三首相は24日、神戸市内で講演し「来たるべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に自民党の(改憲)案を提出したい。わが党が先頭に立って歴史的な一歩を踏み出す決意だ」と述べました。
23日には、自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長が、「読売」のインタビューで「来年6月の改憲発議を目指す」と発言。しかしそこでは、年内をめどに改憲案をとりまとめ、来年の通常国会に改憲案を提出するとしていました。
独断で前倒し
日替わりで、改憲スケジュールを急ピッチに書き換え前倒しする異常な動きです。しかも首相の独断―。
「全然聞いていなかった」。首相に近い自民党幹部の一人は周囲にこう漏らしています。自民党内の論議さえまったく無視して、国の最高法規の改定を推し進めるという前のめり。改憲の中身もスケジュールも首相主導で推進する、重大な憲法尊重擁護義務(99条)違反です。
改憲策動の異常な加速の背景に何があるのか―。
来年12月の衆院議員の任期満了までに総選挙を行わなければなりません。しかし、支持率の急落や野党と市民の共闘の広がりで、選挙で議席を減らす可能性が大きい。衆参で改憲発議に必要な3分の2議席を確保している現状で確実に発議するには、選挙前、すなわち来年夏までに発議するしかないという状況があります。
気がつく前に
もう一つは憲法への自衛隊明記の危険について、国民が気づく前に一気に発議、国民投票に持ちこむという狙いです。
安倍首相は24日の講演でも「自衛隊に対する国民の信頼は9割を超え過去最高なのに、憲法学者の2割しか自衛隊を合憲としていない。この状態を放置できない」などと述べています。「自衛隊の合憲化」なら国民多数の合意を得られるという「自負」を見せます。また9条1項、2項に手を付けないことで、国民の警戒を回避できるという「計算」もあります。
しかし、9条2項の下で、「海外での武力行使禁止」などの諸制約のもとに「合憲」とされた自衛隊は、憲法上の存在に格上げされた途端、従来の制約から解き放たれ、海外での無制限の武力行使に大きく道が開かれます。
この本質的危険に国民が気づく前に一気にことを進める―。改憲スケジュールの異常な加速の奥底に秘められた狙いです。(中祖寅一)