2017年6月23日(金)
「ミサイル落下時の行動」テレビ、新聞で宣伝
過剰反応 危機感あおる
対北対話の解決こそ重要
政府は23日から、北朝鮮の弾道ミサイルが日本に落下した事態を想定した広報をいっせいに流します。テレビCMは23日から2週間にわたって全国民放5局で放送し、新聞広告は23〜25日にかけて全国70紙に掲載するという大規模なもの。あまりにも過剰な対応で危機感をあおり、不必要な混乱を起こしかねません。
ネットにも掲載
広報内容は、(1)弾道ミサイル落下の可能性がある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)を通じて警報が流れる(2)その際、国民は屋外では頑丈な建物や地下に避難する、地面に伏せて頭部を守る。屋内では窓から離れる―などというもの。インターネットの大手検索サイトにも26日から7月9日まで掲載します。
政府は今年4月、すでにこうした内容を各都道府県に通知。これを受けて、一部の教育委員会が弾道ミサイルに関する注意喚起の文書を児童・生徒や幼稚園児にまで持ち帰らせ、保護者から「不安をあおる」との声が相次ぎました。
また、4月29日早朝、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて東京メトロが約10分間、地下鉄全線の運行を見合わせました。Jアラートも発せられず、しかもミサイル発射から40分以上過ぎての対応に「過剰反応だ」と苦情が寄せられました。
そもそも、日本への弾道ミサイル攻撃の蓋然(がいぜん)性が、どれほどあるのでしょうか。北朝鮮は昨年以降、35発のミサイルを発射しましたが、Jアラートを通じて警報が出されたのは、昨年2月、沖縄県のはるか上空を通過したときだけです。それ以外は、政府も飛来の可能性はないと判断しているのです。それにもかかわらず、政府の広報は攻撃が差し迫っているかのような印象を与え、こうした自治体や企業の過剰な反応を促す要因になりかねません。
軍事的対応突出
北朝鮮による核・弾道ミサイルの開発は地域の平和と安定を脅かすものであり、決して容認できません。
重要なのは、問題の根本的な解決は対話を通じて北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させる以外にないということです。すでに米国や韓国、ロシアなど関係各国が相次いで北朝鮮との対話再開を表明していますが、日本だけが対話に否定的で、軍事的対応の強調で突出しています。
しかし、日本への弾道ミサイル飛来の可能性に言及していること自体、自ら安保法制=戦争法や日米同盟による「抑止力」の限界を認め、日本に被害がおよぶ可能性があることを認めているといえます。