2017年6月22日(木)
南スーダン日報
「戦闘」13年から全土に
戦争法ありきで 国民・隊員を欺く
今回、明らかになった陸上自衛隊・南スーダンPKO(国連平和維持活動)派遣隊の「日報」(2013年12月〜14年1月)は、キール大統領・マシャール副大統領派の最初の武力衝突が発生した時期のものです。
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「5原則」は崩壊
1面報道のように、日報には首都ジュバでの銃撃戦を契機に「戦闘」が全土に広がる情勢が克明に記されています。政府は、PKO参加にあたり「紛争当事者間の停戦合意」など5原則を定めましたが、日報に記載されている情勢を見れば、参加の前提となる5原則の崩壊は明らかです。
実際、政府はこの時期に「緊急撤収計画」を決裁し、撤収に備えていました。ところが、南スーダンPKOの参加各国がとどまったことから、撤収を見送りました。
その後、政府は15年の安保法制=戦争法に関する国会審議でも「武力紛争が発生したとは考えておらず、派遣の前提である5原則は維持されている」などと答弁。「駆け付け警護」などPKO部隊の任務を大幅に拡大した戦争法を強行成立させました。
「日報」を隠ぺい
昨年7月には13年末を大きく上回る規模の武力衝突がジュバで発生しました。ところがここでも、政府は戦闘の発生を否定し、「発砲事案」「5原則は維持されている」と虚偽答弁に徹します。
さらに、当時の状況を記した「日報」の情報開示請求(16年10月)に対して、政府は昨年末、存在していた日報を隠して「破棄した」と虚偽の決定を行いました。一方、政府は同年11月、「駆け付け警護」などを付与した部隊を南スーダンに派遣し、今年5月まで活動を継続。戦争法の“実績”をつくったのです。
防衛省は今年3月、日報隠ぺいに関する特別防衛監察に着手しましたが、調査結果が公表されないまま、国会は閉会しました。
南スーダンでは13年末からPKO参加5原則は崩壊していたにもかかわらず、安倍政権は戦争法の強行と具体化のために国民を欺き、自衛隊員やその家族を傷つけてきたといえます。虚偽に虚偽を重ねてきた南スーダン派兵の真剣な総括が求められます。(竹下岳)