2017年6月16日(金)
共謀罪法案に対する仁比議員の反対討論
参院本会議
日本共産党の仁比聡平議員が15日の参院本会議で行った共謀罪法案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。
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法務委員会におけるわずか17時間50分の対政府質疑でも、法案の重大な危険性、それをごまかそうとする政府答弁の矛盾や詭弁(きべん)があらわになっていました。安倍総理はラジオ番組で、「不安を広げるための議論を延々としているんだろうと思いますね」などと、議員の質問も国会審議の意味も否定する重大発言を行いましたが、不安を広げる答弁を繰り返してきたのは政府の方です。中間報告を強行し、国会が国会であることを自ら否定する自民・公明諸君の暴挙は、この安倍発言とうり二つです。
合意だけで処罰
法案に反対する理由の第一は、人の生命や身体、財産などの公益を侵害する危険性が客観的にはない合意を処罰するものだからです。
政府は、主体を組織的犯罪集団とし、計画とそれに基づく実行準備行為という三つの構成要件で限定したといいます。
しかし、政府が繰り返すテロ組織・暴力団・薬物密売組織は例示にすぎません。その団体の結合関係の基礎としての共同の目的が別表第3に掲げられた277もの罪にあり、警察の判断で捜査と処罰の対象になりうるのです。政府は一般人が対象となることはあり得ないと言いますが、条文上全く限定されず、結局警察に捜査対象と目されれば誰もが一般人ではなくなると言っているに等しい暴論です。
また、実行準備行為は外から見れば日常生活と区別はつきません。刑法の原則である行為主義の原則と相いれないのです。
これは戦前、日本やナチスが、人々の自由を侵害し、恐怖におとしいれた反省に立った歴史の到達であり、この行為原則を踏みにじる共謀罪は断固として許すわけにはいきません。
人権侵害の危険
反対する第二の理由は、犯罪とは無縁の市民の人権・プライバシーを深く侵害する活動を行い、まったく反省のない警察・検察の活動に法的根拠を与え、深刻な人権侵害の危険があるからです。
その危険は、通常の団体が「一変」したら共謀罪、環境保護や人権保護が「隠れみの」なら共謀罪、とする政府答弁によっていよいよ浮き彫りになっています。警察組織が「住民運動は『隠れみの』ではないか」と情報収集を行い、その中で共謀罪の嫌疑を抱けば捜査に移行する。公安情報収集活動と犯罪捜査を連続して行うことがはっきりしました。ここに密告を奨励する自首減免規定が盛り込まれていることは極めて重大です。
犯罪と無縁の国民が警察のさじ加減一つでプライバシー侵害され、なぜ調査対象になったかもわからないまま深く傷つけられる重大な危険があります。
国際社会も指摘
反対する第三の理由は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結に不可欠との政府の説明が国際社会の指摘によっていよいよボロボロになっているからです。
TOC条約はマフィアなどの国際的な経済組織犯罪の取り締まりを目的としたものであり、日本政府を含むG7各国がテロリズムを本条約の対象とすべきではないと主張してきました。条約の国連立法ガイドを起草したニコス・パッサス教授は「条約はイデオロギーに由来する犯罪のためではない。犯罪の目的について、『金銭的利益その他の物質体利益を得ること』とあえて入れているのは、その表れだ」と指摘しています。TOC条約は国内法原則、すなわち日本国憲法に従って国際組織犯罪対処の措置を求めているのです。すでに国会承認はなされており、現行法で条約を締結すべきです。
法案の不明確性が法執行機関の前近代的な秘密体質と結びついて深刻なプライバシー侵害が引き起こされる。そのことをケナタッチ国連特別報告者の公開書簡が指摘しています。自分の意に沿わない真実の証言や道理に立った批判は、敵視し、けなし、封殺しようとする、そのような態度が通用するはずもありません。
安倍政権打倒へ
森友学園問題、加計学園問題など、政治を私物化し、安倍総理の進退にかかわる重大疑惑には問答無用でふたをし、一方で捜査権力の乱用という重大な危険をはらむ共謀罪だけは何が何でも押し通す。そのような態度がいつまでも通用すると思ったら大間違いであります。
国民には何が秘密かも秘密にして秘密保全体制を敷いた特定秘密保護法、憲法9条と戦後日本の歩みを百八十度覆し、日米一体で戦争する国に変えようとする安保法制=戦争法、そして、モノをいう国民を監視し萎縮させようとする共謀罪法案、次には憲法9条の明文改憲に踏み出そうとする、暴走する安倍政権の戦争する国づくりを私たちは断じて許しません。市民と野党の共闘の力を一層強く、大きくし、安倍政権を必ず打倒する決意を強く表明し、反対討論を終わります。