2017年6月15日(木)
独裁国家への危険な道
追い込まれた安倍政権 民主主義破壊に審判を
南スーダンPKO(国連平和維持活動)派兵、米艦防護など安保法制=戦争法の実行に踏み出している安倍晋三首相は、9条改憲に踏み込み、「2020年施行」と期限まで切って「戦争する国」づくりの完成を目指しています。「共謀罪」法案はその一環です。
内心に踏み込み
共謀罪は、国家が国民の内心処罰に踏み込み、日常的に国民を監視するもの。発達した通信傍受技術や監視システムを使って、全ての国民が監視される恐れがあります。
安倍政権が13年に強行した秘密保護法は、主権者である国民が国家を監視する権利を大規模に制限するものです。
国家を監視しコントロールするはずの主権者=国民と、国民に奉仕し自由を擁護する国家との関係が逆転する、恐るべき独裁国家が構築されつつあります。秘密保護法は、共謀罪を通じた国民監視の実態をも秘密のベールで隠すものです。戦争する国づくりは、戦前の流れさながらに、国家秘密拡大と国民監視、弾圧の流れを強めています。
しかし、これらは全て日本国憲法の人権尊重と民主主義の原理に反するもの。批判はやむことがなく、直近の世論調査でも「この国会で成立させる必要はない」が7割を超えています。数の力で押し切っても、国民多数の同意はありません。
内心処罰と監視社会化という根本問題に対し、政府・与党は「組織的犯罪集団に対象を限定した」とごまかしを続けましたが、計画の主体が団体の「周辺者」でよいとされるなど破綻を深めました。審議打ち切りは、野党の追及からの逃避であり、国会と国民に対する説明放棄という安倍政権の致命的弱点を示すものです。
政権行き詰まり
さらに政府・与党が、審議打ち切り本会議採決に持ち込もうとした背景には、政権の深刻な政治的行き詰まりがあります。
もともと「共謀罪」法案審議は遅れに遅れ、会期末が近づく中で、目前に迫った東京都議選もはさんで長期延長して審議する方針も検討されました。
しかし、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる疑惑で、「総理のご意向」として首相の「腹心の友」が経営する同学園ありきで計画が進んだことを示す文部科学省の内部文書が示され、前川喜平前文部科学事務次官が「文書は本物」「国会に呼ばれれば証人喚問に応じる」と発言。疑惑は一気に政権の危機となり、文科省内部に文書が保存されていることや、首相補佐官が前川氏に圧力をかけた事実も明らかになりました。国会会期を延長すれば追及を受けるとして、延長回避論が強まったのです。
居直り続けてきた菅義偉官房長官も、記者会見で答弁不能に陥り、9日には一転して文科省内の再調査を行うことに。調査結果を出せば、国会審議は避けられない一方、正面からの審議に耐える自信がないため「延長回避」を最優先とし、参院ではわずか17時間50分の審議で質疑を打ち切るという強硬路線に出ざるを得なくなったのです。
「共謀罪」法案の強行劇は、法案への国民の批判、渦巻く国政私物化疑惑への不信に追い込まれた安倍政権の危機的行き詰まりの表れにほかならず、政権の強さではありません。政権基盤は流動化しています。目前に迫る東京都議選で、疑惑隠し、民主主義破壊の安倍政権に厳しい審判を下すときです。