2017年6月13日(火)
NHK日曜討論 小池書記局長の発言
日本共産党の小池晃書記局長は11日のNHK「日曜討論」で、18日に会期末を迎える終盤国会で重大な焦点となっている「共謀罪」法案と学校法人「加計学園」疑惑について、各党代表と議論しました。
「共謀罪」法案
市民監視権限 警察に与える
番組前半は、「共謀罪」法案について議論となり、自民党の下村博文幹事長代行、公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は、「共謀罪」法案が国際組織犯罪防止(TOC)条約を批准するために必要だという破綻した議論を繰り返し、今国会での成立を押し通そうとする姿勢を鮮明にしました。
小池氏は、TOC条約はテロ対策ではないと政府自身も明言し、同条約の締結手続きに関する国連「立法ガイド」を起草したニコス・パッサス教授が現在の法体系で対応できるとしていることを強調。法案がプライバシー権を制約する恐れがあると指摘した国連のジョセフ・ケナタッチ特別報告者に対し、安倍政権がいまだ回答すら示さない態度を批判しました。
その上で小池氏は、3月に45%だった「共謀罪」法案の賛成が25%まで急落したNHKの世論調査を示し、「審議が進めば進むほど、反対意見が増えている。国際社会の疑念にも国民の疑問にも答えられないような法案は廃案にするしかない」と主張しました。
民進党の玉木雄一郎幹事長代理は「議論するほど、誰が何をすれば罰せられるのか不明確さが増している」と指摘しました。
下村氏は、ケナタッチ氏の指摘について「国連と関係ない個人の専門家の意見だ」と弁明。小池氏は「国連の特別報告者は私人ではない。国連の人権理事会が任命している。それを日本政府は支持してきた」と反論しました。
「共謀罪」法案について、捜査や処罰の対象に歯止めがかからないのではないかという議論に移ると、下村氏は、「組織的犯罪集団で計画し、実行準備行為があることが対象になる。一般人が対象になることはあり得ない」と述べました。
小池氏は、衆院の審議で一般人は対象にならないと答弁してきたが、参院で金田勝年法相が「組織的犯罪集団の構成員ではない『周辺者』が犯罪計画に加われば、処罰されることはあり得る」と答弁したことや、環境保護団体や人権保護団体を「隠れみの」に組織犯罪を企てた場合は共謀罪で処罰されると答弁したことを指摘。「周辺者」や「隠れみの」にしているかどうかを見分けるには日常的に監視しなければわからないと述べ、「市民を監視する権限を警察に与え、それを強大にする法案で答弁が揺れ動いていく。あまりにも危険だ。徹底審議が必要であり、今国会での強行は絶対にやってはいけない」と強調しました。
下村氏は、「組織的犯罪集団と一般人を見分けるのは捜査の問題で今回の法案に限った話でない」と論点をそらし、捜査手法はこれまでも適正にされてきたと強弁しました。
小池氏は、「共謀罪」法案は、実行準備行為が行われていない段階でも任意捜査ができ、組織的犯罪集団かどうかを見分けるためには、一般人や団体を日常的に監視しなければ成り立たない仕組みだと指摘し、「警察の権限を拡大することは間違いない」と強調。岐阜県大垣署の市民監視事件にふれ、特定秘密保護法、盗聴法の大幅強化などこれまで警察に与えてきた“危険な武器”に加え、「『共謀罪』が新設されれば、日常的な監視が行われる」と警鐘を鳴らしました。
民進党の玉木氏は「議論すればするほど、組織的犯罪集団以外の者に広がっていくことは法務省も認めている。とても限定がかかっているといえない。一般の人にも捜査、調査の対象が及びうる法案だ」と指摘。自由党の森ゆうこ参院会長は「テロリストは普通の市民の顔をしてテロ行為をする。普通の市民を捜査の対象にしなければテロそのものが防げない。政府の説明は矛盾している」と述べ、社民党の又市征治幹事長も「1億総監視社会をまねく危険性がある」と指摘しました。
日本維新の会、日本のこころは、「共謀罪は必要だ」として、終始、自公の援護に徹し、安倍政権の補完勢力ぶりをあらわにしました。
「加計」疑惑
第三者調査と証人喚問ぜひ
番組後半は、国家戦略特区による獣医学部新設に関し、安倍晋三首相の意向が働いた疑惑が問題になっている「加計学園」について議論になりました。
「総理のご意向」などと記した文書の文部科学省の「追加調査」の結果の公表について、自公は「国会開会中に」(下村氏)、「速やかに」(斉藤氏)と述べました。
小池氏は「『怪文書だ、印象操作だ』という対応を政府も与党もしてきた。まずそこを反省することが先だ。それをせずにただ調査をしろといってもまともな調査にならない」と批判し、一日も早く調査結果を発表するべきだと強調しました。また、政府が文科省内だけの調査にとどめようとしていることに対し、「疑惑の本丸である内閣府、首相官邸に第三者も入れて調査をすべきだ」と主張しました。
自公などは、問題の本質を「岩盤規制に穴をあける」(下村氏)ことだという議論にすり替えようとしました。
これに対し小池氏は「本質は穴をあけたことの是非ではなく、どういう穴をあけたかだ。加計学園にあわせた穴をあけたのではないか。その決定過程が公平なのか公正なのか。これが事の本質だ」と反論しました。そのうえで、「政府の意思決定がどのように行われたのか。そこに首相の意向が働いたのかどうかが決定的に重要な問題だ。この問題を徹底解明しなければ行政の信頼性が損なわれる。内部調査だけではなく、前川喜平前文科省事務次官を含めて証人喚問をぜひやるべきだ」と主張しました。
民進・玉木氏は「利益誘導が行われているかどうか。一校しか恩恵を受けられなくなったことが問題だ」と強調しました。
下村氏は野党の批判に対し、「情緒的だ」と攻撃しました。
小池氏は、「事実を言っている。獣医師は充足してきているといってきた農林水産省の方針がいつどこで変わったのか。国家戦略特区でトップダウンでやってきた。その議長が安倍首相だ。その安倍首相が加計学園の経営者と『腹心の友』だという。安倍昭恵さんも加計学園の『こども園』の名誉園長をやっている。これを『印象操作』の名のもとに否定するのは議論の否定だ」と反論しました。
終盤国会
野党は連携し たたかう決意
番組の最後に終盤国会にどう臨むかを問われ、自民・下村氏は「共謀罪」法案の会期内成立を目指すことを明言しました。民進・玉木氏は「加計」疑惑などで誠実な態度がなければ「不信任案を視野に入れる」と語り、自由・森氏、社民・又市氏も最後まで徹底的にたたかうと語りました。
小池氏は「安倍政権は国民の疑問に答えようとしない。こんなひどい内閣はなかった。野党は共謀罪廃案、森友・加計疑惑の徹底究明、安倍政権のもとでの憲法9条改悪に反対することを確認した。信任にまったく値しない内閣なので、野党は緊密に連携をとって徹底的にたたかう決意だ」と力を込めました。