2017年6月5日(月)
自衛隊南スーダン派遣差し止め訴訟
国は現地の危険認めて
原告の意見陳述(要旨)
自衛隊の南スーダンPKO(国連平和維持活動)派遣は違憲としてその差し止めを求める訴訟の原告、自衛官の母である千歳市の平和子さんが1日の札幌地裁での第2回口頭弁論で行った意見陳述(要旨)を紹介します。
裁判官が変わったことで改めて私が訴訟を提起した理由と、私が感じる恐怖を話します。
私が全国有数の自衛隊基地の街である千歳で生まれ育ち、米軍と自衛隊を身近な存在として感じていたことは、この訴訟でも重要なことだと思います。
中学校で憲法の戦争放棄を学び、自衛隊は専守防衛で米軍とは違い、戦争をすることはないというのが私にとって当たりまえの認識でした。しかし昨年の安保関連法(戦争法)施行で自衛官の任務は以前とは比較にならないほど危険性が増えました。
防衛省は、南スーダンに派遣された第10次隊(息子が所属する陸自第7師団)が現地の情勢を記録した文書「日報」を公表しましたが、戦闘激化でPKOが停止したり、隊員が巻き込まれたりする可能性を指摘しており、深刻な戦闘状態にあるとされています。国には、事実がどうだったのかを明らかにすることを強く望みます。
息子が行くかもしれなかった南スーダンが、報道よりも格段に危機的な状況にあることが明らかになり、その現場に派遣され、明日の命の心配をし、残される家族を思い浮かべる隊員の気持ちを考えるとき、私の胸は張り裂けそうになります。
政府は任務が完了したからと撤退させました。私は安堵(あんど)した半面、怒りがこみ上げてきました。訴訟では現地情勢が極めて危険であること、PKO5原則にも反していることも明らかにしました。それに対し態度を明らかにしない国を見て、訴訟を起こした意味があると思いました。
自衛隊の南スーダンからの撤退という目的は達成されました。傍聴された皆さんを含め、私たちの紛れもない勝利です。この裁判が子どもたちを撤退させたのだと確信します。
他方、事実を明らかにしない国の姿勢に対し、私が感じた苦痛、非常に危険な南スーダンに自衛隊が派遣された事実は消えません。
撤収したからめでたし、では済まないのです。撤退したけれど、安保関連法が存在する以上、いつ新たなPKOの派遣命令が下るかわからず、危険な任務を息子が命じられる可能性は高まるばかりです。誰の子どもも殺し、殺されてはなりません。
集団的自衛権容認の閣議決定以降、日本の平和主義は、なし崩し的に壊されています。
南スーダン撤退で終わりではありません。私の息子がいる部隊の自衛官が受けた苦しみは、そのまま私の苦しみです。事実を明らかにされるよう、公正な裁判運営を願います。