2017年6月1日(木)
政令市のマイナンバー多額支出 2年で316億円にも
制度設計の大手に集中
昨年1月からの共通番号(マイナンバー)制度実施にともなって、市区町村ではシステム改修などに毎年、多額の支出を要しています。20政令指定都市の2年分(2014、15年度)で、マイナンバー制度に少なくとも計316億円を支出していたことが31日、わかりました。このうち、システム改修費用の8割超が、マイナンバー制度の設計にかかわった大手企業4社・グループに集中する“お手盛り”ぶりが浮き彫りになりました。
(井上拓大、原千拓、矢野昌弘)
政令指定都市の日本共産党市議団と本紙の調査によると、マイナンバーの支出316億円の内訳で、最も大きいのはシステム改修費用の206億円です。(円グラフ)
総務省の天下り法人「地方公共団体情報システム機構」への負担金・手数料の90億円が続きます。同機構への支出は、予算では120億円超と見込まれていましたが、マイナンバーカードの申請枚数が見込みを大幅に下回り、同機構への支出も減りました。備品の購入やコールセンターの設置など、その他の費用が19億円となっています。
システム改修では、大手電機・通信企業のNEC、富士通、日立製作所、NTTデータなどのNTTグループに8割超(金額ベース)の契約が集中していました。
この4社・グループはいずれも幹部が、11年に政府が設けた会議「情報連携基盤技術ワーキンググループ」のメンバーです。
この会議では、マイナンバー導入のための技術的な課題を検討していました。
この4社・グループは、国の行政機関が13年以降に発注した関連事業70件の契約のうち55件を占めています。国でも自治体でも、この4社がマイナンバー事業で独占している実態が浮き彫りになりました。
一方、この4社・グループ以外の企業55社が受注した金額は30億円にとどまります。最も多く受注した企業でも5億円となっており、1億円以上の受注は6社だけでした。
マイナンバー制度に詳しい水永誠二弁護士は「制度設計にかかわった4社・グループの“お手盛り”にならざるを得ない構造的な問題がある。また、情報システム機構はシステムトラブルを繰り返すなど問題が多い。多額の負担金を払い続けることは住民目線から考えても問題だ」と指摘します。
|