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2017年5月31日(水)

教育勅語 安倍政権下で急転換

学校現場教材に使用可

文科省関係者が証言

「下村文科相が答弁変更を指示」

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 戦後の歴代政権と文部科学省は「教育勅語」を教材として扱うことを否定してきました。現行憲法と教育基本法に反する、という理由です。その姿勢が安倍政権のもと“政治主導”で急転換したことが、文部科学省関係者の証言などから浮かびあがってきました。(三浦誠)


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(写真)森友学園が運営する塚本幼稚園の玄関には教育勅語がかざられていました=大阪市淀川区

 転換点は2014年4月8日の参院文教科学委員会。教育勅語を「学校現場で活用できるという見解でいいか」との質問に、文科省の前川喜平・初等中等教育局長(当時)はこう答弁しました。

 「教育勅語の中には今日でも通用するような内容が含まれており、これらの点に着目して学校で活用することは考えられる」

 続いて下村博文文科相(当時)が、「学校で教材として使う」ことは「差し支えない」と踏み込みました。下村氏は同じ日に、「教育勅語そのものの中身はしごくまっとうなことが書かれている」と記者会見で発言しています。

 文科省関係者によると同省は当初、教育勅語を学校教育で使うことは慎重にすべきだという趣旨の答弁案を準備していました。

 なぜ答弁案が変わったのか―。

■閣議で決定

 この関係者は、「下村文科相の指示で、教育勅語を学校で使うことは差し支えないという答弁案に変更された」と証言します。本紙は下村氏に事実関係を質問しましたが、回答はありませんでした。

 このときは日本共産党の宮本岳志議員が「『差し支えない』と答弁したのは、文科大臣としてあなた(下村氏)が初めてだ」(同年4月25日、衆院文部科学委員会)と追及。前川局長は「教育勅語そのものを教材として使うということは考えられない」と教材使用を否定しました。

 ところが安倍内閣は再度、突破をはかります。今年3月31日に、「憲法や教育基本法などに反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではない」とする答弁書を閣議決定しました。

 安倍晋三首相はもともと教育勅語を評価していました。官房長官だった06年には、「大変すばらしい理念が書いてある」と国会で述べています。

 教育勅語は、明治天皇が「臣民」に下した教育の指導原理として1890年に発表されました。内容は、重大事態があれば命をかけて天皇を守れというもの。国民を侵略戦争に動員するうえで大きな役割を果たしました。

■憲法に反す

 戦後の1948年に、衆参両院が教育勅語の排除・失効を決議します。当時の森戸辰男文部相は国会でこう述べています。「教育勅語は明治憲法を思想的背景としており、その基調において新憲法の精神に合致しがたい」

 中曽根康弘内閣の83年には、生徒に教育勅語を朗読させていた島根県の私立高校に、文部省が県を通じて中止を指導。同省の鈴木勲・初等中等教育局長(当時)は国会で「教育活動の中で取り扱ってはならない」と明言しています。

 文科省の元幹部は指摘します。

 「戦前に日本が軍国主義に陥った根本に教育勅語がある。国民を精神的に支配し、『天皇のために死ね』と教えた。カルト宗教の教義みたいなものだ。日本国憲法の根本原理に反するので、現在の学校で“良いもの”と教えてはならない」


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