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2017年5月28日(日)

主張

自衛隊明記の改憲

「9条死文化」狙う危険な策略

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 現行の憲法9条1項、2項を残しつつ、新たに「3項」以降に自衛隊を明記する改憲案を提起した安倍晋三首相の指示で、自民党の憲法改正推進本部が年内の改憲原案づくりに向けた議論を始めました。首相は「合憲か違憲かの議論の余地をなくすためだ」と述べ、単に今ある自衛隊を憲法で認めるだけかのような印象を振りまいています。しかし、これは、国民世論を意識したごまかしにすぎません。憲法に自衛隊の存在理由が書き込まれれば、9条の持つ意味はがらりと変わります。「9条死文化」を狙った企てに反対する世論と運動を広げることが急務です。

世論を意識し本音を隠す

 自民党の改憲案はこれまで、「戦力」の保持を禁止した9条2項をなくすことで一貫していました。

 2012年の「日本国憲法改正草案」は、9条2項を「前項(1項)の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と書き換え、「9条の2」を新設して「国防軍」の保持を明記し、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」も可能にしています。集団的自衛権の行使をはじめ海外での制約のない武力行使を公然と認める改憲案です。

 歴代政権は、自衛隊が9条2項で保持を禁じる「戦力」には当たらないと言うため、「わが国の自衛のための必要最小限度の実力組織」と説明してきました。そのため、(1)武力行使の目的を持って武装した部隊を他国領域に派遣する海外派兵(2)外国に対する武力攻撃を自国が攻撃されていないにもかかわらず実力で阻止する集団的自衛権の行使(3)目的・任務が武力行使を伴う国連軍への参加―は、「自衛のための必要最小限度を超えるから憲法上許されない」としてきました。安倍政権が強行した安保法制=戦争法も、この建前を全面的に崩すことはできません。

 自民党の改憲草案は、こうした9条2項の制約を正面突破し、全て解禁するのが狙いでした。しかし、それでは「(衆参各国会議員の)3分の2(以上による憲法改正)の発議は難しいし、ましてや国民(投票)の過半数を取ることは難しい」(安倍首相)として持ち出したのが、今回の首相の改憲案です。

 首相の改憲案の発信源とされる改憲右翼団体・日本会議系シンクタンクの日本政策研究センターが出版した『これがわれらの憲法改正提案だ』は、9条1項、2項を残し、「3項」に自衛隊を明記する思惑を露骨に語っています。

 「二項を削除し自衛隊を世界の国々が保持している『普通の軍隊』として位置づけることが最もストレートな解決方法」だが、「七十年間にわたって浸透してきた(国民の)『九条平和主義』は根強い」から、「二項はそのままにして、九条に新たに第三項を設け、第二項が保持しないと定める『戦力』は別のものであるとして、国際法に基づく自衛隊の存在を明記する」

 1項、2項を変えることに反対する国民を欺き、自衛隊を「普通の軍隊」にする危険な策略です。

無制限の武力行使許さず

 首相の改憲案には、災害救助などで活動する自衛隊を憲法上認めるだけのように装いつつ、実際は海外での無制限の武力行使を可能にする狙いが込められているのは明白です。世界に誇る9条を百八十度転換させる改憲を絶対に許すことはできません。


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