2017年5月26日(金)
「総理のご意向」文書 前文科次官が語った
幹部が共有。確実に存在 薄弱な根拠で規制緩和
前川氏の記者会見(要旨)
学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部を新設する計画をめぐり「総理のご意向」などと書かれた文書を「本物です」と証言した文部科学省前事務次官の前川喜平氏(62)が25日、東京都内で行った記者会見の要旨を紹介します。
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愛媛県今治市における国家戦略特区において獣医学部の新設を規制改革のもとで認めるべきかどうかが、昨年来、行政上の課題になっていた。文科省の事務方の責任者として、その経緯に関わった。行政のあり方において、当事者の立場で疑問を感じながら、国会で、その経緯を示す文書が議論され、野党からその存在について政府に問いただされ、その8枚の文書が本物かどうか、存在するかどうかについて文科省で調査が行われたと聞く。その結果、確認できなかったという結論になったと聞き、大変残念な思いをしている。
実際に在職中に共有していた文書だから確実に存在していた。あったものをなかったことにはできないということを申し上げたい。
8種類の文書については、私が昨年の9月から10月にかけて、文科省の高等教育局専門教育課から、私が事務次官の立場で、事務次官室において報告と相談を受けた際に受け取った文書に間違いない。文書によって、その範囲は多少違うが、幹部の間で共有された文書であることは間違いない。したがって、文科省で改めて調査すれば、それは存在が明らかになるはずのもの。
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」というペーパーがあるが、私の手元にあるスケジュールによると、9月28日に私が専門教育課から説明を受けた際に受け取ったものと同じものだ。
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さらに「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という文書がある。この回答は、いわば内閣府からの最後通告に近いもので、“与党での議論はいらない”ということが書いてあるし、30年4月開学は決まったことだと。そこには「総理のご意向」という言葉もでてくるが「30年4月で決まったことだ、大前提である」と言われている。いずれも真正なもの、本物であると申し上げることができる。
閣議決定で、獣医学部の新設を認めることを検討するにあたって新たな分野の需要など四つの条件を示した。
追加規制改革で認めるのであれば、この四つの条件に合致していることが証明されなければならない。私は四つの条件に合致していることが実質的な根拠をもって説明されているとは思えない。文科省としては大学設置認可の権限を法律上持っているが、きちんと国民に説明できる形で行使しなければいけない。
いったん設置が認可された大学は、国民から預かった税金から私学助成もしなければならない。したがって大学の認可はきちんと根拠をもって行わなければならない。
医師、獣医師など特定分野においては、将来の需要がみこめない、原則的に禁止、新設しないという考えに立っている。獣医師の将来需要について、農水省に、きちんと見通しをたててもらわないといけない。文科省としては将来の人材需要についてきちんと見通してくれなければ、責任がもてないといい続けてきた。ところが農水省、厚労省も明確な見通しを示してくれなかった。その中で規制改革が行われた。獣医学部の新設について特例を認めるという結論が出てしまった。
非常に行政のあり方として問題だ。きわめて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。また公正公平であるべき行政のあり方がゆがめられたと認識している。
これ以上、行政のあり方をゆがめることがないようにしてほしい。
「加計」は共通認識だ
証人喚問まいります
記者との一問一答
――大前提として、この問題は“加計学園ありき”“今治ありき”の計画か。
前川 関係者の間の暗黙の共通理解としてあったのはたしかだと思う。口に出して、加計学園という言葉を使ったかどうかというと、そこは使っていない場合が多いと思う。しかし、内閣府においても文部科学省において、この国家戦略特区で議論している対象は、今治市で設置しようとしている加計学園の獣医学部だという共通認識のもとで仕事をしていたという認識でいた。
――国会では日本共産党の小池晃参院議員が告発した文書がある。承知しているか。
前川 確たることは申し上げられないが、私が担当課から受け取ったものと同一のものと思われる。
――証人喚問に求められたら出るか。
前川 証人喚問があればまいります。
――文科省で文書の再調査をする際、どのように探せばよいか。
前川 どういう調査するか、具体的に申し上げられないが、これは見つけるつもりがあればすぐ見つかるもの。なにか複雑な手法を用いる必要はない。