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2017年5月23日(火)

主張

通商交渉と日本

TPP断念し公正なルールを

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 アメリカのトランプ政権が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を決めたのを受け、日本の通商交渉が矛盾を深めています。安倍晋三政権は、トランプ政権に復帰を働きかけてもうまくいかず、アメリカを除く11カ国でまず発効させようとしましたが、思惑通り進みません。2国間交渉で自国の「利益第一」を目指すトランプ政権は、TPPの中身を土台に、日本の輸入拡大を求め、日米2国だけで「自由貿易協定(FTA)」を結ぼうと言い出しています。安倍政権がTPPをきっぱり断念し、主権を尊重した公正・平等の貿易・投資のルール確立が急務です。

経済も暮らしも破壊する

 日本やアメリカなど12カ国が参加、発足させようとしたTPPは、競争力が強い国、国境を越えて活動する多国籍企業のために、関税を原則撤廃し、非関税障壁も大幅「緩和」するなど、各国の主権を踏みにじって、経済にも暮らしにも重大な影響を与えるものです。多国籍企業が進出先の国を相手取って損害賠償を訴える投資家対国家紛争解決(ISDS)条項なども盛り込んでいます。

 安倍政権はアメリカの強い要求を受け入れ、国民世論にも国会決議にも逆らって、TPP交渉に参加しました。コメ・麦、牛肉など重要農産物でも、関税の撤廃や輸入枠拡大など、「無傷」なものは一つもないといわれるほど、大きな犠牲を払って合意しました。

 ところが今年発足したアメリカのトランプ政権は自国の「利益第一」の立場から一転して離脱を表明、安倍政権のもくろみは破綻します。安倍首相は首脳会談などでアメリカの復帰を求めてもうまくいかなかったのに、見通しがないまま、TPPの国会承認、批准を強行しました。TPPにあくまで固執する異常な態度です。

 20、21の両日開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開催されたアメリカを除くTPP参加11カ国の閣僚会議では、石原伸晃経済再生担当相がまず11カ国でTPPを発効させ、アメリカに対しては日本が「橋渡し」になって復帰を促すことなどを主張しましたが、発効できませんでした。TPPはアメリカや日本などが参加しなければ発効しない仕組みで、“アメリカ抜き”の発効はもともと無理があります。

 アメリカのトランプ政権はTPPからの離脱の方針を変えようとせず、今回のAPECでも「離脱が変わることはない」「1対1の交渉の手間も惜しまない」(ライトハイザー米通商代表部=USTR=代表)とあくまで2国間交渉で日本などの譲歩を求める構えです。ロス米商務長官は「朝日」21日付のインタビューでTPPは「出発点」で、最終的には貿易や投資を自由にする日米「FTA」を結ぶと明言しました。日本にさらに犠牲を迫る姿勢です。

TPPを前提にする限り

 安倍政権はTPPで農産物などの輸入拡大を受け入れました。アメリカはそれを土台に、農産物や自動車などの輸入拡大をさらに迫るといわれています。TPPを前提にした2国間交渉に引き込まれる危険はいよいよ明白です。

 日本政府にいまなにより必要なのはTPPをきっぱり断念することです。そのうえで、経済主権、食料主権に立った公正・平等な貿易ルールをこそ確立すべきです。


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