2017年5月12日(金)
9条2項の死文化、無制限の海外の武力行使に道を開く
安倍首相の改憲発言で 志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は11日、国会内で記者会見し、安倍晋三首相が憲法9条に3項を設け、自衛隊を明記する改憲を行い、2020年に施行を目指すと表明したことについて、「単に存在する自衛隊の憲法上の追認にとどまらない。文字通り無制限の海外での武力行使に道を開くことになる」と批判しました。
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志位氏は、戦後、政府は違憲の自衛隊をつくり、それを合憲としてきたが、「戦力不保持」を定めた憲法9条2項の制約から、「自衛隊は、我が国の自衛のための必要最小限度の実力組織であって戦力にあたらない」という合憲論を主張し、その帰結として、(1)海外派兵(2)集団的自衛権の行使(3)武力行使を目的とした国連軍への参加―という三つのことができないとしてきたと指摘。安倍政権は、一昨年の安保法制=戦争法を強行して、この見解に大穴をあけたが、それでもなお少なくとも建前では、さまざまな制約を認めざるを得なかったと述べました。
そうしたもとで9条に3項を設け、自衛隊を明記したらどうなるか―。志位氏は「たとえ(戦力不保持を定めた)2項を残したとしても、その2項の死文化に道を開くことになる」と指摘。「なぜなら、3項という独立した項目で自衛隊の存在理由が書かれれば、それが独り歩きすることになるからだ」と強調しました。
志位氏は、たとえば3項に「ただし、国際の平和と日本の独立を確保するために自衛隊を保持する」と書き加えれば、「自衛隊は2項の制約から解き放たれて、海外における武力行使は文字通り無制限となり、9条2項は死文化されることになる」と指摘。「もともと9条2項の削除は、自民党の改憲論の一貫した宿願であることを忘れてはならない」と強調しました。
志位氏は、「安倍政権のもとでの憲法改悪は許さない」は野党4党の合意であることを強調、「必ず阻止するために国民的たたかいを起こしていきたい」と決意を語りました。
志位委員長の会見(要旨)
日本共産党の志位和夫委員長が11日の記者会見で、安倍晋三首相の改憲発言について述べた内容(要旨)は次の通りです。
5月3日、安倍首相は、憲法9条に自衛隊を明記する改憲を行い、2020年に施行を目指すと表明しました。
発言そのものが二重に憲法違反
まず、このやり方が極めて異常だということを言わなければなりません。日本会議系の改憲派集会と読売新聞のインタビューで表明し、国会では説明を拒否して、「読売新聞を熟読してほしい」と言い放つ態度をとりました。安倍首相は、「あくまで自民党総裁としての発言であって、総理と総裁は別だ」としていますが、こうした言い訳は絶対に成り立ちません。
安倍晋三氏は何よりも内閣総理大臣です。その安倍首相が憲法9条を変えることを時期まで決めて宣言した。これは憲法99条の「憲法尊重擁護義務」に反する憲法違反の発言です。加えて、立法府に対する行政府の不当な介入であるという点では「三権分立の原則」にも反します。まず、発言そのものが二重に憲法に反する違憲発言です。
さらに、安倍首相は2020年の東京オリンピックに合わせて憲法を変えるとも言いました。しかし、誰がどう考えても憲法9条とオリンピックは関係がありません。
“オリンピックのため”といって「共謀罪」を出してくる、“オリンピックのため”といって憲法9条を変える――これはオリンピックの最悪の政治利用だといわねばなりません。オリンピック憲章は、「スポーツの政治利用はしてはならない」としており、オリンピック憲章違反でもあります。
無制限の海外での武力行使
発言の内容は極めて重大です。安倍首相は「9条1項、2項は残し、自衛隊の記述を3項として書き加える」と言っています。こうなったとするとどうなるか。それは単に存在する自衛隊の憲法上の追認にとどまりません。結論から言うと、文字通り無制限の海外での武力行使に道を開くことになります。
安保法制=戦争法と9条2項の制約
戦後、政府は違憲の自衛隊をつくり、それを合憲としてきましたが、9条2項――「戦力不保持」という制約から、「自衛隊は、我が国の自衛のための必要最小限度の実力組織であって戦力にあたらない」という合憲論を主張してきました。
そして、「戦力にあたらない」ことから三つのことができないといってきました。一つは、海外派兵、二つは、集団的自衛権、三つは、武力行使を目的とした国連軍への参加です。
一昨年の安保法制=戦争法の強行は、この見解、とくに集団的自衛権に大穴を開けるものとなりました。しかし、そのときも安倍首相は、「イラク戦争やアフガン戦争のような場合に、武力行使を目的にして戦闘に参加することは決してない」「集団的自衛権はあくまで『限定的』なものであって『存立危機事態』が起こったときに限られる」と何度も答弁しました。安保法制=戦争法をつくったけれども、少なくとも建前では政府はいろいろな制約を認めざるを得なかったのです。
9条2項の死文化に道を開く
そういうもとで、3項を設けて自衛隊を明記したらどうなるか。その場合は、たとえ2項を残したとしても、その2項の死文化に道を開くことになると思います。なぜなら、3項という独立した項目で自衛隊の存在理由が書かれれば、それが独り歩きすることになるからです。3項を根拠にして自衛隊の役割がどんどん広がっていくことになります。
たとえば、3項で「ただし、国際の平和と日本の独立を確保するために自衛隊を保持する」としたらどうなるか。これは、私が勝手にいっているのではありません。自民党改憲案では、そういうような内容が規定として述べられています。その場合は、自衛隊は2項の制約から解き放たれて、海外における武力行使は文字通り無制限となります。9条2項は死文化されることになります。もともと9条2項の削除は、自民党の改憲論の一貫した宿願であることを忘れてはなりません。
国民的たたかいで阻止しよう
こんなことを国民の誰が望んでいるのか。安倍首相は「機は熟した」といいます。しかし、どの世論調査をとってみても、9条についてはこれを変えるべきではないという声が6割前後と多数です。「機は熟した」といいますが、「熟した」のは首相の頭の中だけであって、国民世論の中にはそんな「機」はどこにもありません。世界が誇る憲法9条を台無しにする大改悪を絶対に許すわけにはいきません。
野党4党は、「安倍政権のもとでの憲法改悪は許さない」と党首間で合意しています。しっかり野党共闘を強めて、このたくらみを必ず阻止したい。そのための国民的なたたかいを起こしていきたいと決意しています。