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2017年5月11日(木)

公明新聞が「共謀罪」Q&A

中身はうそとごまかし

国民の批判に説明できず

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 公明新聞が紙面の1ページを使って「テロ等準備罪」法案特集(4月28日付)を掲載しました。Q&Aで「共謀罪」法案への強い批判をはね返そうとしたものですが、答えの中身は“テロの未然防止のために必要”とうそとごまかしがちりばめられています。


「テロ対策」は条約の対象外

 第1の「なぜ必要なのか」との問いには、「テロの未然防止のため」だ、と「テロ対策」を前面に押し出します。テロを防ぐには国際連携が必要で、そのための国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結する上で「共謀罪」(テロ等準備罪)法案が不可欠だという論旨です。

 そこにはいくつものごまかしがあります。

 そもそも「共謀罪」がテロ防止に役立つのか、具体的な説明はありません。

 また、TOC条約の目的はマフィアが行う資金洗浄などの経済犯罪対策にあり、テロ対策は条約の対象から除外されていることには触れていません。国会審議でそれを野党に指摘され、政府は同条約がテロ対策条約だとは言えなくなっています。

 TOC条約の締結のために300近い「共謀罪」をつくる必要はありません。刑法学者の高山佳奈子京都大学大学院教授が、現行法制度の下、「共犯や予備罪・陰謀罪の処罰等の諸制度を組み合わせることで(TOC条約を)締結できる」と指摘しています。(4月25日、衆院法務委員会参考人質疑)

「準備行為」の見分けは「心の中」

 第2問は「“内心”の処罰が狙いでは」。「『内心の自由が侵害される』との誤った批判があります」などとのべています。犯罪の「合意」に加え「準備行為」が行われて初めて罪が成立するから、批判は「誤り」だというものです。

 国会審議では、“花見と犯罪の下見の違い”を例に議論になり、ある行為が「準備行為」なのか、日常的な行為なのかを外見だけで判断するのは困難であり、見分けるには目的=「心の中」を調べざるをえないとして、「準備行為が加わっても、内心を処罰する本質は変わらない」と指摘されています。公明新聞は、このような審議の経過を伝えていません。

警察の判断で組織的犯罪集団

 第3問は「市民生活まで監視するのか」。“犯罪の主体を「組織的犯罪集団」に限定したので一般人は捜査対象にならない”と繰り返しています。

 しかし、一定の犯罪を実行する目的で“人が結合した”と警察が判断すれば、「組織的犯罪集団」とされてしまいます。金田勝年法相は、4月28日の衆院法務委員会で、「組織的犯罪集団」の認定について、捜査機関による恣意(しい)的な判断を防ぐ仕組みは「ありません」と認めました(日本共産党・藤野保史議員への答弁)。また政府は審議の中で、草野球チームや同窓会なども、「(犯罪目的の団体に)一変した場合ということでとらえる」と答弁しています。

「準備行為」なしで任意捜査は可能

 第4の「警察が拡大解釈し乱用しないか」という問いに対しては、「共謀罪」の成立要件とする「準備行為」がなければ強制捜査できないとの政府答弁を用いて反論しています。

 しかし、法務省は「準備行為」がなくても任意捜査は可能だと認めています。実際に、警察は「任意捜査」と位置付けて市民に対する違法な情報収集を繰り返しています。「共謀罪」導入で一番恐ろしいことは、こうした警察の日常的な監視活動なのに、強制捜査の問題にすり替えているのです。

 令状なしに行っていたGPS(全地球測位システム)捜査に対して、最高裁判決(3月)は違法捜査だと判断しています。

TOC条約の締結に必要ない

 第5の「国際社会の取り組みは」の問いに対しては、「TOC条約で国際協力を進める」と強調しています。

 野党もTOC条約の締結自体には反対していません。TOC条約締結で、国際的な協力が進むことには意味があります。しかし、第1の問答でごまかしを指摘したように、TOC条約締結のために、刑法の基本原則を大転換するような、非常に多くの「共謀罪」をもうける必要はありません。

 国連の立法ガイドでも、同条約の義務の履行のためには「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」とされており、行為と犯罪結果があってはじめて処罰するという刑法の根本原則を否定する必要はないのです。


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