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2017年5月10日(水)

主張

精神障害者の医療

監視強化と人権侵害許されぬ

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 安倍晋三政権が提出し、参院で審議中の精神保健福祉法改定案に対し、障害者や医療の関係者などから「精神障害者の監視強化につながる」などの批判が上がっています。改定案の柱は、精神障害のある人が、自分自身や他人を傷つける恐れがあると診断された際、本人の同意なしに強制的に入院させる仕組み(措置入院制度)の強化です。安倍政権は、昨年起きた相模原市の障害者施設での殺傷事件の「再発防止」を改定の口実にしていますが、それは全く理由にならず、精神障害者の人権を侵害する法案の危険性が審議の中で浮き彫りになっています。

提案理由削除の異常事態

 改定案は、措置入院患者の退院後の「継続的な支援」などをうたいます。しかし、その中身は▽全ての措置入院患者について本人や家族の意思とは関係なく、支援計画を作成する▽支援計画に本人の拒否権は規定されず、支援体制に警察の参加も容認▽対象者が転居したとき、都道府県は転居先の自治体に通知しなければならない―などです。「支援」どころか、精神障害者のプライバシーや居住の自由までも侵害し、監視対象に置く意図が前面に出ています。相模原事件の被告に措置入院歴があったことを念頭に置いたものです。

 改定案について安倍首相は今年1月の施政方針演説で、「措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります」と表明しました。精神保健福祉法の目的の“精神障害者の医療や福祉による援助”というよりも、再発防止と治安対策を優先する姿勢を示したものです。

 改定案の中身が明らかになると、多くの関係者から「“精神障害者は犯罪者だ”とする偏見を前提としたものだ」などの反対意見が続出しました。そんな中、塩崎恭久厚生労働相は改定案審議の最中の4月半ば、参院厚労委員会で突然、改定趣旨から「二度と同様の事件が発生しないよう」の文言削除を表明しました。改定理由の「核心」部分を消し去ることは、前代未聞です。改定案提出の根拠を根本から失わせるものであり、本来なら法案の撤回と、出し直しが必要なケースです。それを押し通そうというのは、あまりに乱暴です。

 そもそも相模原事件と精神障害者の医療支援体制を結びつけること自体が大問題です。相模原事件の被告に措置入院歴があることと事件との因果関係は明らかになっていません。事件についてのきちんとした検証や真相解明がなされないまま、措置入院制度を強化すれば「再発防止」につながるという発想は、精神障害者を“危険な存在”とみなす誤った考えに根ざしています。障害者への差別と偏見を助長することにつながる法案は、廃案こそ必要です。与党は今週中にも参院厚労委での採決を狙いますが、許されません。

人権保障の施策拡充こそ

 精神障害者に対する医療提供の拡充はその病状の改善など精神的健康の保持増進を目的とすることを出発点にすべきです。退院後の地域での生活への移行促進は、人権の尊重・保障が大前提です。

 政府は、精神障害者を監視するシステムづくりを断念し、国連の障害者権利条約に基づく権利擁護の仕組みを盛り込んだ体制づくりこそ急ぐべきです。


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