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2017年5月2日(火)

主張

有明海の再生

漁業・農業の共存は国の責任

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 長崎、佐賀、福岡、熊本4県にまたがる有明海は、大きな潮の満ち引きにより海の浄化が行われ、豊富な水産物を産出する漁場でした。諫早湾(長崎県諫早市)とそこに広がる干潟が、重要な役割を果たしていました。国営諫早湾干拓事業で打撃を受けている有明海の再生は、漁業者はもとより、地域住民にも切実です。山本有二農水相は4月末、裁判で確定していた諫早湾の潮受け堤防排水門を開門する義務を放棄すると表明しましたが、海の再生にとって深刻な障害となる重大な姿勢です。

異変招いた水門閉め切り

 20年前の4月14日、干拓事業のために諫早湾を外海から閉鎖する排水門で、鋼板をいっせいに落とす様子がテレビ放映され、「海のギロチン」と衝撃を広げました。それが「宝の海」といわれた有明海に大きな異変をもたらしたことは、その後の経過で明らかです。

 ノリの栽培や有明海特産のタイラギ(二枚貝)漁に異変が現れ、2000年にはノリが大不作となり、赤潮の異常発生や貧酸素海域の出現など漁業と海洋環境への大きな影響が明らかになりました。農水省が設けた「有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(第三者委)」は、水門閉め切りを異変の重要な要因と認め、開門し海水を導入した調査を提案しました。しかし、国は、短期の開門を実施しただけで、02年には干拓事業を再開、開門調査そのものも打ち切り、干拓事業を完成させ、07年には農地への入植が始まりました。

 異変はさらに広がり、漁民は「よみがえれ有明訴訟」を起こしました。福岡高裁は10年、漁業被害と干拓事業との因果関係を認め、3年間の準備期間の後に5年間、潮受け堤防排水門の常時開放を命じ、国は控訴せず判決が確定しました。その後、農業者が開門差し止め訴訟を起こし、13年に長崎地裁がそれを認めました。

 その中で、国は開門しないことによる「制裁金」を支払い、開門を先送りしてきました。福岡高裁判決の履行期限が迫ったため、今年3月、長崎地裁による両方の当事者による和解協議が行われました。国は、漁業被害を立証せず、開門しないことを前提にした「想定問答集」を作って漁業関係者を説得するなど不誠実な態度に終始、和解は不成立となり、長崎地裁は4月17日、開門停止の判決を出しました。国が控訴しなければ、開門決定判決は失効し、有明海の再生は極めて困難になります。

 「よみがえれ有明訴訟」原告団は、国の態度を「自ら推し進めた干拓事業に対する批判は許さないという、有明海漁業の悲惨な現状を見ない身勝手なもの」と厳しく批判し控訴を求めましたが、農水相はそれを無視しました。環境や漁民の生業(なりわい)を破壊して顧みない大型公共事業をめぐる自民・公明政権の横暴を示す典型です。

両立図り解決に道開け

 水門閉め切りと諫早干潟の消滅が、有明海異変の要因であることは否定できません。漁業者側は、有明海の再生とともに、干拓地の維持・改善、洪水対策は一体で進められるとして具体案を提起し、日本共産党もその立場から国会論戦し、運動をすすめてきました。

 有明海で漁業・農業の共存は可能です。漁業と農業の両立を図り、海の再生に道を開くため国が責任を持つことが求められます。


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