2017年4月27日(木)
主張
今村復興相の辞任
資質欠く人物据えた責任重大
度重なる暴言・失言に、心底からの怒りを禁じえません。東日本大震災について「東北のほうだからよかった。もっと首都圏に近かったりすると、莫大(ばくだい)な被害になった」などと発言した今村雅弘復興相のことです。怒りを浴び、復興相を辞任したのは当然です。今村氏はつい先日も、東京電力福島第1原発事故での「自主避難者」の帰還を「自己責任」と発言して批判が集中したばかりです。地震や津波の被災者が「よかった」などと思うはずがありません。今村氏に復興相としての資質がなかったのは明白であり、今村氏を起用した安倍晋三首相の責任は重大です。
適格性が根本から問われ
一連の発言はたまたまのものではなく、今村氏にもともと復興行政を担当する資質がなかったことを浮き彫りにするものです。
「東北のほうだからよかった」という発言は、25日の自民党二階派のパーティーで講演した中で飛び出したものです。そのあとあいさつした安倍首相でさえ「東北の方々を傷つける極めて不適切な発言」だといったのに、今村氏自身は講演後も「首都圏にもっと近かったらという意味だ」と弁解に終始し、再三の追及にようやく不適切だったと認めるありさまです。
それでも辞任はなかなか言い出さず、同日夜になって与党からも批判が高まってやっと辞意を口にしました(辞表提出は26日)。復興相としても、閣僚としても自覚が著しく欠けているのは明白です。
自ら大きな被害を受けた地震や津波、原発事故の被害者に対して、「よかった」などという言葉が出てくる余地はありません。かけがえのない家族や全財産を失った被害者が、どんな気持ちで受け取るかの想像力さえないのか。福島原発事故の「自主避難者」の帰還は「自己責任」などといった先日の発言も、自ら望んで避難したわけでもなく、周辺の放射線が不安で、帰りたくても帰れない避難者への配慮が全くありません。
復興相は大きな災害にあった被災者への支援が第一の仕事のはずです。その復興相が被害者や避難者の悲しみや苦しみに心を寄せるどころか「よかった」「自己責任」などと冷たく言い放つ。被災地で復興行政の後退や被災者支援の切り捨てが進んでいることと二重写しになって、今村氏の復興相としての資質はもちろん議員としての適格性が根本から問われるのは明らかです。報道したメディアを批判した二階俊博幹事長の発言も大問題です。
今村氏の辞任の後、安倍首相は「任命責任は私にある」と発言していますが、とても納得できません。なぜ今村氏を復興相に起用したのか、これまで暴言や失言が明らかになった時、なぜ辞めさせなかったのか。言葉だけでなく、首相自身も責任を明白にすべきです。
安倍政権のモラル崩壊
安倍政権で暴言や失言が後を絶たないのは、今村氏だけではありません。博物館などの学芸員を「一番のがん」と非難した山本幸三地方創生相、女性問題で議員辞職が求められている中川俊直前経産政務官など、まさに「モラル崩壊」ともいうべき状況です。
根本的には政権の責任者である首相自身が任命責任を果たさず、「森友学園」をめぐる疑惑でも解明に背を向けていることがあります。今村問題にとどまらず、首相の姿勢がきびしく問われます。