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2017年4月26日(水)

「共謀罪」法案参考人質疑(要旨)

衆院法務委

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写真

(写真)発言する高山佳奈子京都大学大学院法学研究科教授=25日、衆院法務委

高山京都大学大学院教授の陳述

 25日の衆院法務委員会での「共謀罪」法案の参考人質疑で、京都大学大学院の高山佳奈子教授(刑事法)が行った意見陳述の要旨は次の通りです。

 TOC(国際組織犯罪防止)条約の早期締結に賛成ですが、「テロ等準備罪」を設ける本法案には反対です。

 第1に法案は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催のための「テロ対策」を内容とするものではないと考えます。

 本法案は、一人の単独犯によるテロ計画、単発的な集団のテロが射程に入っておらず、重要な部分が対象から外れています。

 テロ対策はすでに立法的手当てがなされています。14年改正のテロ資金提供処罰法により、テロ目的の資金、土地、建物、物品役務、その他の利益の提供が包括的に処罰対象になりました。これでほとんどのテロ目的の行為はカバーでき、テロの観点で五輪対策は事実上完了しています。さらに、テロに限らず違法な目的で物品を入手する行為やある場所に入っていく行為は、かなり広い範囲で詐欺罪や建造物侵入罪の処罰対象になっています。テロ対策として、日本は諸外国に比べてもかなり広い処罰範囲をすでに有しています。

 2点目は、条約への参加の仕方です。

 条約5条では参加罪、結集罪や共謀罪による組織犯罪への対処を求めています。しかし国連が各国への参考資料として04年に公表した「立法ガイド」の51項では、参加罪や結集罪、共謀罪の制度化のうち一つを欠いている国が、必ずしもそれを導入する必要はないという趣旨を述べています。条約全体を見ると、各国が組織犯罪対策を国内法の基本原則に適合させ、憲法の範囲で対処することを求めています。しゃくし定規的な国内法化は求められていません。それを示す一例が米国です。いくつかの州の刑法が共謀罪の一般的な処罰規定をもっていないため、条約に留保を付した上で参加しています。

 第3は、今般の法案の対象が限定されているかどうかです。

 ある団体の構成員の一部が性格を犯罪的なものに「一変」させた場合を対象に含めるとなれば、一般人の通常の団体として結成された場合も除外できないことになります。

 犯罪の「実行準備行為」は、特段の危険性がなくても外形的な(犯罪の準備)行為であれば、特に限定なく(資金、物品の手配、関係場所の下見以外の)「その他」の中に全部含まれるとの読み方ができると思います。

 第4は、対象犯罪の選別の問題です。とくにTOC条約との関係で、経済犯罪を除外している問題があります。

 一般に商業賄賂罪と呼ばれ諸外国で規制が強化されてきている会社法や金融商品取引法、商品先物取引法などの収賄罪が対象犯罪から外れています。主に組織による遂行が想定される酒税法違反や石油税法違反なども除外されています。その一方で、「違法なキノコ狩り」など、五輪とも暴力団とも関係ないものが多数含まれています。

 内容が不可解な法案には賛成できません。


戦前に戻らないとは言えない

漫画家 小林よしのり氏

 「民主主義を守るために物を言う市民は必要。言論を萎縮させるようなことがあると困る」

 衆院法務委員会で25日に行われた参考人質疑。「保守」を自任する漫画家の小林よしのり氏が、国民の思想・内心を処罰する「共謀罪」法案への反対を表明しました。

 日本共産党の畑野君枝議員が「立場の違いを超え、国家に介入されて内心・思想・信条・表現の自由を奪われることは許さないという趣旨だと思います」と尋ねました。

 小林氏は、共産党への“警戒心”を示しつつも、「でも共産党は現在の国家権力に対する批判では非常に鋭い。頼りになる。言論・表現の自由を守るというところでぜひとも活躍してほしい」と答えました。

 同日の質疑で、「政権の不始末が次から次に起こっても、北朝鮮やテロが危ないと言ったらどんどん右に傾いていく」と世相を憂えた小林氏。テロの脅威をあおる日本維新の会の松浪健太議員に対しては、「左翼の人が“戦前に戻るぞ”と言ったら、“昔と今は違う”と簡単に保守の側は言うけれど、治安維持法があった戦前は国民が右に傾いていった。過去に戻らないとも言えない」とたしなめました。


捜査“暴走”懸念

元自民党衆院議員 早川忠孝弁護士

 元自民党衆院議員の早川忠孝弁護士は25日の衆院法務委員会の参考人質疑で、政府が「共謀罪」法案を「テロ等組織犯罪処罰法」と呼んでいることについて、「TOC(国際組織犯罪防止条約)では『共謀罪』と訳している」と指摘しました。

 早川氏は「テロ等組織犯罪だったら必要な制度だと国民の半分ぐらいの方はそう思うだろう」と政府与党のごまかしの意図を説明。「しかし、法案の中身はちょっと違う」と指摘し、「正しい議論を共有したうえで、対象犯罪を減らすべきだ」と述べました。

 さらに、早川氏は捜査機関による冤罪(えんざい)事件を取り上げ、「(捜査機関は)テロ犯罪を防止するということで、さまざまな情報収集の過程で、予断、偏見、見込み、誤った捜査をしてしまう。成績主義があるから、なんらかの仕組みをつくると結果を出さないといけない」と述べ、「共謀罪」法案の成立に伴う捜査機関の“暴走”に懸念を表明しました。


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