2017年4月25日(火)
世界と日本をどうとらえどう変えるか
日本共産党綱領セミナー(主催・民主青年同盟)での志位委員長の講演
ダイジェスト
23日に日本共産党本部大会議場で開かれた志位和夫委員長の党綱領セミナー「世界と日本をどうとらえ どう変えるか」(日本民主青年同盟主催)は、大会議場や全国各地での視聴会に参加した若者たちに大きな反響を呼び起こしました。当日寄せられた感想文は約300通。2時間にわたる講演で志位氏は、(1)いま日本が必要としている変革は何か(2)21世紀の世界をどうとらえるか(3)日本における未来社会の展望―の三つの角度から、党綱領の生きた力を縦横に語りました。そのダイジェストを紹介します。
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いま日本が必要としている変革は何か――民主主義革命
「綱領の一番の要は、いま日本が必要としている変革を『民主主義革命』としているところにあります」と切り出した志位氏。なぜいま「民主主義革命」か。それはいまの日本社会は、憲法がうたう「国民主権」の国とはいえない“二つの大きなゆがみ”を抱えているからです。
アメリカの従属国から本当の独立国へ
第一のゆがみは、「国民主権」でなく「アメリカ主権」=アメリカの従属国の状態におかれていることです。
海外駐留米兵約15万人のうち最も多いのは日本で約5万人、しかも海兵遠征軍をはじめ在日米軍のどれもが日本防衛とは無縁の海外の戦争への介入と干渉を専門とする「殴り込み」部隊です。志位氏の告発一つひとつに参加者から驚きの声があがりました。
さらに、日本政府は米国の戦争を、どんなに無法な戦争、道理のない戦争であっても「何でも賛成」してきた歴史があります。今回の米トランプ政権によるシリアへのミサイル攻撃も、安倍政権は米国からその国際法上の根拠について何の説明も受けないまま、支持しました。志位氏は安倍首相らとの国会論戦を紹介しながら、日本政府がベトナム侵略戦争やイラク侵略戦争を全面支持し、米国が戦争をはじめたさいに口実とした問題がねつ造と分かっても検証も反省もしなかった姿を浮き彫りにしました。
「この先また、米国が事実をねつ造して戦争を始めても、何も考えず、何も確かめず、支持し、協力することになるでしょう」。こう警鐘を鳴らし、綱領で指摘する「異常な対米従属の状態」から抜け出すために、(1)米国の無法な戦争に自衛隊が武力行使でもって参戦する安保法制=戦争法の廃止は急務であること、(2)国民多数の合意で対米従属の根源にある日米安保条約を廃棄し、対等平等の日米友好条約を結ぶことで本当の独立国といえる平和な日本をつくることを力説しました。
大企業の横暴勝手をおさえ、「ルールある経済社会」を
第二のゆがみは、「国民主権」でなく「財界主権」となっていることです。
日本は、大企業・財界の横暴勝手が野放しにされ、国民の暮らしや権利に関わる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識になっているルールがない、「ルールなき資本主義」となっています。電通の若い女性社員・高橋まつりさんの過労自殺が大問題となりましたが、過労死・過労自殺は15年間で4倍近く増加。日本の年間労働時間は、ドイツ、フランスに比べ600〜700時間も長く、そのうえ統計にはあらわれない「サービス残業」が横行しています。法律による労働時間の上限規制などEU(欧州連合)のようなルールが日本に存在しないためです。
党綱領は、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」づくりを改革の目標にし、そのための主な手段として「大企業の民主的規制」を提唱しています。志位氏は、この方針の意義について、(1)大企業は社会によって強制されなければ、無制限の利潤追求に走ってしまい、社会のまともな発展の条件を自ら壊してしまう(2)「大企業の民主的規制」は、日本の変革の課題であるとともに、世界的視野でも必要で、必然的な方針となっていると強調しました。
このなかで志位氏が紹介した、世界90カ国以上で貧困克服のために活動している国際協力団体「オクスファム」の報告書(今年1月)は参加者に衝撃を与えました。それは「世界で最も豊かな8人が世界の貧しい半分の36億人に匹敵する資産を所有していた」という現実です。報告書は各国政府が協力して世界ですすむ異常な格差と貧困をただすことを呼びかけており、まさに「大企業の民主的規制」は、世界的視野でも必要で、必然的な方針となっているのです。
民主連合政府と統一戦線――野党と市民の共闘
それでは、民主主義革命をどう進めるのか。「一番の力となるのは、国民の多数のなかに民主主義革命を進めようという合意をつくること」と強調した志位氏は、民主主義革命を実行する民主連合政府や、野党と市民の共闘でめざす野党連合政権(国民連合政府)の綱領上の位置付けを詳しく語りました。そのうえで、いま目の前に起こっている新しい市民運動、野党と市民の共闘、野党連合政権の可能性などはいずれも戦後初めてであり、日本の政治は「未踏の領域に踏み出している」と力説。野党と市民の共闘を成功させるカギは、(1)市民・国民のたたかいの発展(2)「多様性」を互いに尊重し、互いにリスペクトの精神で力を合わせることだと強調しました。
21世紀の世界をどうとらえるか――「核兵器禁止条約の国連会議」から見えた世界
21世紀の世界をとらえるうえで志位氏は、自ら参加したニューヨークでの「核兵器禁止条約の国連会議」(3月27〜31日)をとりあげました。この「国連会議」には21世紀の世界の姿が凝縮してあらわれました。
世界の本流と逆流が鮮やかに浮き彫りになった
その第一は、世界の本流と逆流が鮮やかに浮き彫りになったことです。
「会議」に参加した国連加盟国の半数を大きく超える115以上の国の政府代表と、世界中の市民社会の代表は、世界の本流の姿を示しました。「政府代表と市民社会代表が一体になり、核兵器禁止条約を作り上げていく。その姿は、本当に感動的でした」(志位氏)。
それとは対照的に、米国とその一部の同盟国は、議場の外で核兵器禁止条約反対のキャンペーンを繰り広げるなど、逆流の追い詰められた姿を世界の前に示しました。被爆国政府でありながら不参加を通告した日本政府の態度は、多くの参加国、参加者の失望と批判を招きました。志位氏は力を込めます。
「毎日のニュースでは、米トランプ大統領の言動などが大きく報道され、ここに世界の中心があるかのような錯覚もつくられています。しかし、彼らは国際社会のなかでは文字通りの少数派です。日本政府が、被爆国政府でありながら、米国に追随し、逆流のお先棒を担ぐもとで、私たち日本共産党が、日本被団協や日本原水協のみなさんとともに、本流の中にあって、被爆国・日本国民の声を国連に届けたことは、大きな意義あることでした」
大国中心の時代は終わり、国の大小で序列のない世界に
第二は、一握りの大国が世界政治を動かした大国中心の時代は終わり、国の大小での序列のない世界となっていることが「国連会議」にくっきりとあらわれたことです。
「国連会議」でとくに主導的な役割を発揮したのは、メキシコ、オーストリア、コスタリカ、アイルランド、ブラジルなどの国ぐにでしたが、「小さな国」が「大きな存在感」を発揮したことが特徴でした。志位氏は「今の世界で大切なのは、国の大小でもなければ、経済力の大小でもなく、ましてや軍事力の大小ではありません」と強調。「世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、国際政治の主人公となる新しい時代が開かれつつあります」と語りました。
党綱領の世界論の最大の特徴は、20世紀に進行した人類史の巨大な変化の分析に立ち、21世紀の世界の発展的な展望をとらえるところにあります。20世紀は、植民地体制が完全に崩壊した世紀でした。これは「世界の構造変化」と呼ぶべき巨大な変化です。
志位氏は、核兵器問題の交渉の歴史にふれ、「かつては交渉の『主役』は一握りの大国でしたが、今では世界の多くの国ぐにが『主役』となっている。『主役交代』がおこっています。21世紀の今の世界で重要なのは、20世紀に進んだ『世界の構造変化』が、世界の平和と社会進歩を促進する力として、生きた力を発揮しだしたところにあります。それが最も鮮やかにあらわれているのが『核兵器のない世界』をめざす動きです」と強調しました。
軍事同盟に縛られない、非同盟・中立の流れにこそ未来がある
第三は、軍事同盟は20世紀の遺物であり、軍事同盟に縛られない、非同盟・中立の流れにこそ未来があるということです。
「国連会議」に参加したほとんどの国が、非同盟・中立の立場にたつ国ぐにでした。ASEAN(東南アジア諸国連合)、CELAC(中南米カリブ海諸国共同体)は「核兵器禁止条約を結ぼう」と演説で呼びかけ、会議成功をリード。AU(アフリカ連合)も核兵器廃絶では積極的役割を果たし、アフリカは1996年にアフリカ非核地帯条約が締結され、核兵器のない大陸になっています。ヨーロッパでも軍事同盟に参加していないオーストリアとアイルランドは生き生きとした自主的思考をもって「国連会議」をリードしました。
志位氏は「綱領がめざす新しい日本は、軍事同盟から抜け出し、自主・独立の国になろうということですが、これは世界の圧倒的多数の国が歩んでいる道に日本が合流するという、未来ある道なのです」と訴えました。
日本における未来社会の展望について
資本主義という制度の是非が、根本から問われる深刻な矛盾
民主主義革命をやりとげた日本はどうなるのか。志位氏は、資本主義という制度の存在の是非が根本から問われるような深刻な矛盾が目の前にたくさんつくられているとして、二つの問題を取り上げました。
一つは、格差と貧困の拡大です。OECD(経済協力開発機構)のリポートは、「大半のOECD諸国では、富裕層と貧困層の格差が過去30年で最大になった」と述べています。志位氏は「私たちがめざす『ルールある経済社会』に近い国ぐにであっても、ほぼ例外なく格差は拡大する傾向にあります」と述べ、資本主義体制の下では、格差をなくすことは難しいと考えていると指摘しました。
もう一つは、投機マネーの暴走です。2014年時点で、世界の金融経済は実物経済の約3・75倍(294兆ドル)に達しています。志位氏は、故品川正治氏(経済同友会終身幹事)が「投機市場が、企業の活殺の権限をにぎっている」と語っていたことを紹介。資本主義体制の下では、投機マネーの暴走を、根本的に治療することは難しいとの見通しを示しました。
「人間の自由で全面的な発展」――これこそが未来社会の最大の特質に
問題は、こうした矛盾をどうしたら解決できるのかです。志位氏は、“生産手段が資本家に握られている”という資本主義の本質をひもとき、さまざまな社会悪をつくり出す「利潤第一主義」の原因を解明。「『生産手段の社会化』が、資本主義の矛盾・害悪を乗り越えて、社会主義に進む変革の中心です」と強調しました。
それでは綱領がめざす未来社会の特質は何か。マルクスは、未来社会―社会主義・共産主義の社会の最大の特質として、「人間の自由な全面的な発展」をあげています。マルクスが到達した結論は、社会主義・共産主義社会が、労働時間の抜本的短縮を可能にするというところにこそ、その保障があるということでした。
人間が「自由で全面的に発展」することで、社会全体が力を得て大きく発展し、労働時間はさらに短縮する。そのことがまた人間の「自由で全面的な発展」の条件をさらに大きく広げる―。志位氏は、「こうした社会への前進が、人類史にどれだけの新しい可能性を開くか、はかりしれないではありませんか」と語りかけました。
日本における未来社会の豊かで壮大な展望
志位氏は、「それでは日本における未来社会の展望はどうでしょう」と問いかけ、日本が社会主義の道に踏み出したとき、出発点の諸条件を考えるならば、(1)生産力が高度に発展していること、(2)人権や民主主義・議会の諸制度がつくられていること、(3)人間の人格的独立と個性が豊かに発展していることをあげ、「きわめて豊かで壮大な展望が開けてきます」と力を込めました。
とりわけ、資本主義が、きわだった「浪費型の経済」であることを指摘。「恐るべき『人間、生きた労働の浪費』(マルクス)、恐慌や不況、大量生産・大量消費・大量廃棄、金融経済の肥大化などが生み出す浪費が一掃されたら、社会と経済のどんな素晴らしい発展がもたらされるか、その可能性ははかりしれない」と語りました。
志位氏は講演の最後に、「発達した資本主義国から社会主義・共産主義の道に踏み出した経験を、人類はまだもっていません」と述べ、会場の参加者にこう呼びかけました。
「文字通り、『人類未踏の領域』に踏み出そうというのが、綱領のめざす未来社会の展望です。若いみなさんが、そのことに深い確信をもち、ロマンと大志をもって、21世紀の新しい日本の担い手として学び、成長し、たたかうことを心から願ってやみません」
■各地の感想から
アメリカのいうことを無条件に支持して、それが間違いであっても特に説明を求めないし、反省もしない。そんな人がこの国の首相で政権を握っていることは、本当に恐ろしいことだと思いました。(岡山県 男性 26歳)
国連での各国政府代表、市民社会代表の方々の言葉も非常に印象に残っています。「核兵器禁止が世界の本流」という表現に目からウロコといった思いでした。(兵庫県 女性 19歳)
世界各国でポピュリズムが台頭しているニュースをみて、いつも不安に思っていましたが、今回の話を聞き、一方では社会全体で皆が平和に幸せに暮らしていけるよう働きかけている人たちがいるとわかってよかった。(神奈川県 女性 18歳)
共産党の目指す社会が、資本主義の人間を浪費する社会から抜け出す、資本家が握っている生産手段を社会化して労働時間を短縮し、個々人の本来の能力、個性を花開かせる社会と述べられていたことに希望を感じ、確信を持ちました。(埼玉県 女性 30代)
人類未踏の領域に踏み込むという言葉がとても印象的だった。トランプ大統領や北朝鮮の軍事的問題など、さまざまな問題が目の前に立ちはだかっている。そのような時代の中でも、個人個人の権利をしっかり尊重し、真の幸せを追求して、豊かな国、世界になるように自分も行動したいと思った。(滋賀県 男性 19歳)