2017年4月21日(金)
主張
北朝鮮問題と首相
米の軍事選択肢「評価」やめよ
米国のトランプ政権が北朝鮮の核・ミサイル開発への対応として「全ての選択肢がテーブルの上にある」として軍事力行使も選択肢にすると表明していることについて、安倍晋三首相らが繰り返し「評価」すると述べ、歓迎の姿勢を示しています。トランプ政権が北朝鮮への軍事力行使を示唆して威嚇を強めれば、北朝鮮はさらなる挑発行為に出て東アジアの軍事的緊張は激しくなるばかりです。安倍政権が米国の軍事的選択肢を容認することは、東アジアの平和のためにも、武力による威嚇と武力の行使を禁じた憲法9条を持つ国としても決して許されません。
おびただしい犠牲者生む
核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮への対応で、首相はペンス米副大統領との会談(18日)でも「(米国が)全ての選択肢がテーブルの上にあるとの考え方で対処しようとしていることを日本は評価する」と述べました。ペンス氏は「平和は力によってのみ初めて達成される」とし、武力行使も排除しない姿勢を強調しています。
首相は北朝鮮への先制攻撃についても「米国にやめろと言うことではない」(17日、衆院決算行政監視委員会)と反対しません。
米国が北朝鮮に対して先制攻撃をすれば、どんな事態になるのか。米国内でも、北朝鮮は韓国に侵攻し、「その戦争は朝鮮戦争以来、見たこともない激しさになる」「極めて破壊的な戦争だ」との指摘が上がっています(カーター前国防長官、2日、米ABCテレビ)。
北朝鮮への先制攻撃は1994年、クリントン米政権下で一歩手前までいったことがあります。
クリントン政権はこの時、朝鮮半島で戦争が起これば、▽最初の90日間で米軍5万2千人、韓国軍49万人の死傷者が発生▽ベトナム戦争などの経験に基づけば米国人8万人〜10万人を含め100万人が死亡―などという予測をしていました(米ワシントン・ポスト紙元記者ドン・オーバードーファー氏著『二つのコリア』)。当時の金泳三(キムヨンサム)韓国大統領は、クリントン大統領との電話で、米軍が戦争を始めても韓国軍は一人たりとも動かさないと猛烈に反対したことを後に明らかにしています。
トランプ政権が北朝鮮への先制的な軍事力行使に出れば、韓国や日本を巻き込んで深刻な武力紛争に発展し、おびただしい犠牲者が出るのは避けられません。元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「(米朝で)軍事衝突が起きれば、戦争に巻き込まれるのは米軍基地を抱える日本や韓国」であり、「安易に米国の武力重視姿勢を支持するのは日本の安全にとって有害」と指摘しています(「毎日」19日付)。
韓国で現在行われている大統領選挙で主要5党の候補者全員が「米大統領に電話して先制攻撃を中止させる」(最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏)などと先制攻撃反対を表明しているのに対し安倍首相の姿勢は極めて異常です。
外交交渉で非核化を迫れ
トランプ政権は国際社会と協調して経済制裁を厳格に実施・強化しながら、北朝鮮との外交交渉に踏み切って非核化を迫るべきです。安倍政権は、軍事力行使を選択肢にすることを「評価」する姿勢を改め、外交交渉で北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させる選択肢を取るようトランプ政権に強く働きかけることこそ求められます。