2017年4月19日(水)
きょうの潮流
沖縄にある、ひめゆり平和祈念資料館の学芸員らが国際平和博物館会議に参加するというニュースを地元紙が報じていました。同館のとりくみを広く伝えるとともに、世界の平和教育についても学びたいと▼戦争体験者が少なくなるなかで平和の尊さを次の世代にどう引き継いでいくか。世界から学ぼうとする試みです。戦争に限らず、人類の足跡を受け渡していく作業は意義深い。そこに欠かせないのが学芸員です▼資料の収集や保管、展示や調査研究。博物館法に定められた専門職で国家資格をもつ学芸員は、いま全国で8千人近くが働いています。その歴史の守り手であり継承者に、山本幸三・地方創生相がひどい暴言を浴びせました▼「一番のがんは学芸員。この連中を一掃しなければ」。文化財の観光振興をめぐり、「観光マインドが全くない」とも。貴重な資料の保存と活用という学芸員の役割を理解しようともせず、がんで苦しむ患者にも配慮を欠いた発言です▼安倍政権下で相次ぐ閣僚らの暴言。矛先は米軍基地に反対する沖縄の人びとや、原発事故や震災で傷ついた被災者にも向けられています。そこには、自分たちと意見が合わない、考え方の異なる人に対する敵意やさげすみ、差別意識の根強さを感じさせます▼「差別主義者は己の特権や利益を守り、正当化するために、相手がどう感じようがおかまいなく、差別的な攻撃を被害者に向けて行う」。(好井裕明著『差別原論』)。一掃すべきは、こんな傲慢(ごうまん)な人たちの言動でしょう。