2017年4月17日(月)
認定こども園 初の取り消し
問われる国の責任
公費投入しながら、ずさん監査
兵庫県姫路市の認定こども園で、定員を大幅に上回る受け入れなど子どもの安全に関わる重大な法令違反が発覚し、全国初の認定取り消し(1日)の事態となりました。認定こども園をめぐる国と自治体の責任が問われています。(鎌塚由美)
“幼稚園と保育所の両方の良さをあわせもっている施設”などとして国が推進してきた認定こども園は、全国に4001施設(2016年4月現在)あります。
地方裁量型の施設
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ひとえに「認定こども園」といっても、四つの類型(表)があります。表中(2)(3)は、幼稚園、保育所がそれぞれ認可施設ですが、(4)は都道府県の独自基準で運営されており、国の保育基準では認可外施設です。
今回認定を取り消された姫路市の「わんずまざー保育園」は、もともと認可外施設でしたが、15年からの「子ども子育て支援新制度」を前に、地方裁量型の認定こども園になっていました。
「新制度」では、認可保育所よりも緩い基準の地方裁量型であっても、認可保育所と同様に「施設型給付」(運営費補助金)を受ける仕組みとなりました。
「わんずまざー保育園」には約5000万円(15年度)の施設型給付が出ていました。
ところが、認可保育所と同じ補助金を出しながら、姫路市の指導監査はずさんなものでした。認可保育所では当然実施される年1回以上の指導監査が実施されていませんでした。
日本共産党の田村智子議員は、参院内閣委員会(3月22日)で、「昨年1月にも情報が寄せられながら抜き打ちの監査もしなかった。認定こども園に対する監査が非常に不十分だ」と批判。認定こども園には年1度の監査が義務づけられていない問題を指摘しました。
自治体任せに終始
監査強化を求めた田村氏に対し、加藤勝信少子化担当相は「各自治体において適切に監査が行われている」と自治体任せに終始しています。
「わんずまざー保育園」の数々の法令違反は、立ち入り調査で明るみにでましたが、姫路市が調査に入ったのは、認定から1年10カ後の今年2月。姫路市は、認可外保育施設の指導監督要綱で、施設への立ち入り調査は「概ね年1回」としています。認可保育所並みの補助金を入れながら、監査は認可外施設のレベルにも達していなかったのです。
安倍政権は、“待機児童解消”を口実に、「新制度」のもとでバラバラな保育基準を持ち込み、公費を投入しています。
質向上へ国が役割を
保育研究所所長・元帝京大学教授 村山祐一さん
「認定こども園」制度(06年10月〜)が検討される過程で、幼保連携型、幼稚園型、保育所型については、モデル施設での実証実験を経て仕組みがつくられましたが、検討会での議論もなく、“地方の実情に応じて”などと付け加えられたのが地方裁量型でした。
国の権限も及ばない、自治体任せの施設で、二重、三重の厳しいチェック体制を敷くこともなく、「新制度」では公金が入る制度となりました。公費が入っている以上、地方任せでは済まない問題で、国の責任は重大です。
“地方分権”を口実に、監査が自治体任せとされる流れが続いていますが、保育の実施主体である市町村が、自らの施設を監査するというのはおかしな話です。都道府県をまたいで事業者が参入するなか、国が積極的に監査に乗り出し、保育の質向上で役割を果たすべきです。
今回の事件は、十分な検討もなく、性急に制度を開始させた新制度の問題が表れたものです。他の地方裁量型施設でも、同様の問題が起こりうる可能性は十分あります。地方裁量型の仕組みをこのままにしておくべきではありません。