2017年4月16日(日)
主張
全国学力テスト
「点数競争」あおる施策 廃止を
文部科学省は18日、全国の小学6年生と中学3年生全員を対象に、国語と算数・数学の2教科で全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)を実施します。2007年に第1次安倍晋三内閣のもとで始められた学力テストは、回を重ねるごとに点数競争を激化させ、教育をゆがめています。
「本来の授業ができない」
「全国の平均点より上に」「昨年の平均点を超えろ」―。学力テスト対策のために教育委員会や校長が教師に命じ、子どもたちに過去の問題や類似問題を繰り返しやらせています。テストの点数を上げることが至上命令になり、「本来やるべき授業ができない」との声があがっています。テストに関係のない授業や行事が削られ、授業の画一化が進んでいます。
全国学力テストを導入したときの文科省の口実は「子どもの学力状況を調べる」ということでした。しかし、過去の問題を繰り返しやらせるなどの「点数対策」が横行しているもとでテストをしても、本来の子どもの「学力状況」はわかりません。
こうした現状は文科省も問題視せざるをえなくなり、昨年の全国学力テストのさい、当時の馳浩文科相は「点数さえよければいいのか」とし、2、3月から学力テストの過去の問題集をやらせている学校があるのは「とんでもないこと」などとのべました。
しかし、抽出調査で済む学力テストを全員対象にし、都道府県の平均点を公表するなどして競争をあおったのは文科省自身です。14年度からは、それまで禁止だった学校別平均点の公表を解禁し学校の序列化を加速しました。今年度からは各政令指定市の平均点も公表することにしています。点数アップが最重要課題であるかのようにした責任は文科省にあります。
文科省はテスト導入のもう一つの理由に「教育指導の改善」をあげていましたが、これも成り立ちません。全国学力テストの結果がわかるのはテスト実施から数カ月後で、答案は返却されず、問題ごとにできたかできなかったかを示す「個人票」が渡されるだけです。子どもは自分がどこをどう間違えたかわからず、教師も具体的な指導をすることはできません。
短時間で正解することが求められる学力テストの結果に表れるのは、学習したことの一部だけです。本当に学力を確かなものにするには、じっくり考えたり、議論したりすることが大切です。
その点、学力テストのため、教師が自主的に創意工夫した授業をする自由を奪われているのは重大問題です。文科省は3月末に改定した学習指導要領の中で「主体的・対話的で深い学び」と記しましたが、教師が「点数対策」の授業を強いられていては、豊かな学びを保障することはできません。
丁寧な支援の条件整備を
全国学力テストは、実施理由も破たんし、教育現場をゆがめ、子どもの学力を保障することにはまったく役に立っていません。
毎年50億〜60億円が使われている全国テストは直ちに廃止すべきです。予算を35人学級の完全実現などに回し、学習が遅れがちな子どもへの丁寧な支援ができるようにするなど、一人ひとりに目が行き届くよう教育条件整備にお金をかけ、教師の創意工夫の自由を保障することこそ必要です。