2017年4月12日(水)
きょうの潮流
まだやれる、もっと続けられると思っていたのに。不意に訪れるスポーツ選手の引き際には驚きと衝撃がともないます。どんなに活躍した選手でも、その日が来ることをわかっていながら▼フィギュアスケートの浅田真央さんの引退が列島を駆けめぐりました。自身のブログで、これまで自分を支えてきた目標が消え、気力もなくなったと。そして、「私のフィギュアスケート人生に悔いはありません」とつづりました▼たくさんの人から愛され、心に残る演技を見せてくれました。幼少からスケートを始め、小学6年のときには早くも代名詞となる大技トリプルアクセル(3回転半)を跳び、一気に世界の舞台へと駆け上がっていきました▼小さい頃からの夢であり、目標だった五輪の金メダルには届きませんでした。しかし、みずから集大成と臨んだソチ五輪。ショートプログラムで失敗を重ね失意の中でむかえたフリーで、ジャンプを次々に決めた圧巻の演技は、彼女の真の強さの象徴としていつまでも語り継がれるでしょう▼ひたすらに、ひとすじの道に打ちこんできた姿。思うようにいかず、もがいた時期には自立した氷上のアスリートとしての成長も感じました。安藤美姫さんや高橋大輔さんをはじめ、同じ世代の競い合いは日本のフィギュア熱を大いに高めました▼成功と失敗。喜びと苦悩。起伏に富んだ現役生活は、きっと今後の糧に。まだ26歳。本人も「人生の中の一つの通過点」だと。また、あの笑顔に会える日を楽しみにしたい。