2017年4月12日(水)
主張
「森友学園」疑惑
昭恵氏と国・府を曖昧にできぬ
大阪の学校法人「森友学園」が小学校の開設を名目に、国(財務省)から格安で国有地を手に入れ、大阪府の異例な「認可相当」の決定と合わせて政治家などの関与が疑われている疑惑は、解明が尽くされないまま、問題発覚から2カ月たちました。当面の焦点になっている安倍晋三首相の妻、昭恵氏の証人喚問は、自民、公明の反対などで実現していません。「森友」の前理事長、籠池泰典氏の証人喚問でも疑惑が指摘されたのに、昭恵氏に説明を求めないのは道理がありません。昭恵氏、格安で払い下げた財務省、認可に動いた大阪府の責任は曖昧にできません。
広がり続ける疑惑の連鎖
4月に予定された小学校の開設は延期になり、「森友」の理事長は籠池氏から長女に交代したりしていますが、「森友」がどのようにして国(財務省・近畿財務局)から破格の価格で国有地を手に入れたのか、小学校を経営した経験がなく財務にも問題があった「森友」がどのようにして府から認可を取り付けようとしたのかなど疑惑の核心は解明されないままです。
「森友」側が工事費を偽って国(国土交通省)や府から補助金や助成金を受け取っていたことも明らかになっており、一連の疑惑は広がる一方です。先週末には「森友」が当初は借地していた小学校の建設予定地の汚染除去費用1億3000万円のうち工事業者には約2000万円値引きさせたのに、国には計画通り1億3000万円請求して、支払いを受けていたなど新たな疑惑も明らかになっています。
不動産鑑定で約10億円の国有地が、途中から「借地」から「売却」に切り替えられ、そのとたん約8億円も値引きされ10年間の分割払いになったという異常な取引が、政治家の介入抜きに行われたとは考えられません。先月の衆参予算委員会での籠池氏への証人喚問などでは、開設予定の小学校で「名誉校長」を務め、安倍首相とともに「森友」の幼稚園教育を賛美し、「安倍晋三から」と100万円寄付したとまでいわれる昭恵氏が、籠池氏からの依頼の後、昭恵氏付きの政府職員を通じて財務省に問い合わせをさせた疑いがあり、土地改良費用の支払いや土地の売却に関与していたとも疑わせる手紙やファクスの存在が明らかになりました。
安倍首相や昭恵氏は、あくまでも政府職員が「個人的」にやったことで、自らは無関係なように言いますが、もともと政府職員が「首相夫人付」でなければ起こりえなかったことであり、財務省の対応にも昭恵氏への「忖度(そんたく)」があったといわれるのは当然です。昭恵氏や関係した財務省職員などを国会に喚問し、真相を徹底的に究明するのは不可欠です。
国会は解明に責任果たせ
大阪府の調査では、本来「借地」には開設できない「森友」の小学校への異例な「認可相当」決定の背景にも、財務省・近畿財務局の執拗(しつよう)な働きかけがあったと指摘されています。財務省はなぜそこまでしたのか、大阪府の対応はどうだったのか―解明が必要です。
「森友」疑惑は、会計検査院の調査や市民の告発を受けた大阪地検特捜部の捜査も始まる見込みですが、疑惑がある以上、国会での解明が欠かせません。とりわけ首相夫妻がかかわる疑惑の究明は、政治の最優先課題の一つです。