2017年4月4日(火)
特定秘密 文書なし4割
10件は職員の「頭の中」
衆院審査会報告書 ずさん指定浮き彫り
特定秘密保護法による特定秘密の指定状況をチェックする衆議院の情報監視審査会が3月29日、2016年の年次報告書をまとめ、衆院議長に提出しました。報告書からは、政府に拡大解釈された運用によって、ずさんな秘密指定が行われている実態が浮き彫りになっています。(矢野昌弘)
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報告書によると、15年12月末時点で指定されている特定秘密は443件ありました。このうち約4割の166件で、特定秘密を記録した文書が存在しないことがわかりました。
この166件を分類したところ(表参照)、6類型になります。
このうち15件が、「見込み指定」と分類されました。特定秘密が出てくる前に「見込み」で秘密指定したものの、結局、情報を得ることができていないものです。
「見込み指定」について、報告書は「特定秘密の対象を限定的にし、際限なく広がることがないようにするとの特定秘密保護法の理念から外れた運用がなされている」と指摘しています。
「見込み指定」が多用されている運用実態について「拡大解釈ではないか」とする審査会での発言が紹介されています。
「特定秘密が職員の頭の中に存在」したケースは10件にのぼりました。
報告書では「頭の中の特定秘密では、客観的な証拠がないため(漏えいで)実際に罰則をかけることは困難であり、問題があるのではないか」と疑問を呈しています。
審査会は、文書の不存在問題などについて政府に早急な改善を求めました。
秘密保護法に詳しい野呂圭弁護士は「秘密保護法3条2項では、秘密に指定した時は記録を作成し、特定秘密だと表示するよう定めている。無い物を秘密指定すること自体が倒錯している。結局、法を逸脱した結果になっており、これが慣例的に続けば、逸脱が恒常化していくことになりかねない」と指摘します。
文書が存在しない特定秘密の省庁別の内訳は、防衛省132、防衛装備庁14、内閣官房11、外務省7、警察庁1、公安調査庁1となっています。
情報監視審査会は、衆参両院に常設され、それぞれ8人の議員で構成されています。審査は秘密会となっています。