2017年4月3日(月)
核兵器禁止条約の早期締結を 日本共産党代表団が行った懇談と要請
志位和夫委員長を団長とする日本共産党代表団は、3月27日から31日までニューヨークの国連本部で開催された「核兵器全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉する国連会議」に、「核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)」の一員として公式に参加し、要請文の提出、演説、文書発言を行うとともに、参加した各国政府と個別に懇談・要請を行いました。
|
志位委員長が要請文で行った提起の中心点は、次の通りです。
「核保有国の参加を追求しつつ、かりに最初は核保有国の参加が得られなかったとしても、賛成する諸国の政府によって核兵器禁止条約――核兵器を禁止する法的拘束力のある協定を早期に締結すること。今回の『国連会議』で、核兵器禁止条約の早期締結にむけた国際的合意を達成すること」
党代表団は、要請文を手に、会議が始まる前の3月23日から最後まで精力的に活動し、38の国・機関と懇談を行いました。懇談で各国から寄せられた発言を紹介します。
(地域別・五十音順)
アジア・太平洋
私たちはあきらめない ■ 市民社会と共同しよう ■ 核保有国巻き込もう
インドネシア
この会議はまだ続きます。禁止条約の作成にはまだ長い時間が必要です。核兵器保有国を巻き込む必要もあります。われわれは長期的な楽観主義の立場で活動します。
|
カザフスタン ●エルホルト・センバエフ無任所大使
(要請文と)私たちは同じ立場です。私たちは(旧ソ連の)セミパラチンスク核実験場の経験があります。核兵器がどんな影響を与えるかよく知っています。(禁止条約で核兵器に悪の烙印〈らくいん〉を押すという指摘に)完全に同意します。今後、核兵器保有国を巻き込んでいかないと核兵器は廃絶できません。ジュネーブ軍縮会議の再活性化も必要でしょう。(禁止条約と世界の世論で核兵器を廃絶するという指摘に)全く同感です。この会議も政府とともにNGOが構成員になっています。
スリランカ ●アムリス・ロハン・ペレラ国連大使
要請文のメッセージに賛成です。核兵器保有国がすぐに参加しなくても、まず枠組みをつくるというのは、私たちの立場と同じです。これから長いプロセスが必要です。そのためには、市民社会の役割がたいへん大事です。共同していきましょう。
ニュージーランド ●デル・ヒッギー軍縮大使
日本政府が来ていないなかで、日本の市民の声を届けてくれたことに感謝します。
フィリピン(ASEAN議長国) ●バヤニ・メルカド外務省国連国際組織次官補
(要請文について)私たちと、またASEAN(東南アジア諸国連合)と共通した立場だと思います。しかし困難もあります。核保有国を巻き込まなければなりません。(禁止条約で核兵器に悪の烙印を押すという指摘に)その通りです。生物・化学兵器などもそうして廃棄に向かいました。
ベトナム ●グエン・フオン・ガー国連大使
核兵器禁止条約を重要な一歩とし、完全廃絶に向かうという立場を共有します。(要請文は)とても役にたつものです。長いプロセスとなるでしょうが、高貴な目的のために緊密な協力に努力していきたいと思います。
マーシャル諸島 ●国連代表部参事官
わが国は、67回の南太平洋上での核実験によって被災しています。日本とは共通の被爆の経験があります。日本は核兵器廃絶を世界にアピールする強いポジションをもっています。日本から多くの非政府組織(NGO)が参加して訴えていることは励ましです。先ほどの(志位委員長の)演説で多くの日本国民がこの会議を歓迎していると聞きました。この要請文にある内容で活動している政党に感謝します。
マーシャル諸島が行った「核保有国9カ国の核兵器保有は違法」との国際司法裁判所(ICJ)への提訴は、棄却されましたが、私たちの訴えに連帯を示してくれて感謝します。私たちはあきらめません。核兵器の惨害を知っている国民とともに、日本国民とともにがんばっていきたいと思っています。
ミャンマー ●イ・ガムラ公使
今回の会議はよい出発となっています。これから具体的な議論になっていくでしょうが、ともかくスタートは好調です。
ラオス ●ヒアン・ファンスリボン国連大使
私たちは戦争の惨禍を体験しています。今の核兵器の破壊力は巨大であり、平和と発展のために、核兵器禁止条約へのプロセスを支持します。要請文は啓発的なものです。
中東・アフリカ
激励になる ■ 禁止と廃絶へ新しい時代の始まり ■ 日本政府の不参加 残念
アフリカ連合(AU)
(要請文について)ここに書かれていることは、私たちの立場と同じ線です。こうした活動を進めていることはとても良いことです。私たちへの激励でもあります。1996年にアフリカ非核地帯条約(ペリンダバ条約)ができたときに、アフリカ原子力委員会が設置され、そのもとで、熱心に核兵器廃絶を取り組んできました。今後も力を合わせたい。こうした専門的な内容についても、今後、話し合いをする機会が持てたらうれしいと思います。
アルジェリア ●参事官
この要請文の立場は、アルジェリアはもちろん、会議のほとんどの参加国と共有するものだと思います。核兵器問題は、平和と安全保障の課題で、世界の中でも第一の重要性を持っています。これまで、世界は、化学兵器、生物兵器を禁止してきた経験をもっています。だから、核兵器も禁止しなければなりません。海洋法を締結するときも、長く困難な交渉をして締結にいたりました。この条約化はそれよりも困難かもしれないけれども、必ず禁止し、そして廃絶するために新しい時代がいま始まっています。
イラン
核兵器の完全廃絶が大事です。そのためには、包括的核兵器廃絶条約がベストと考えています。禁止条約は、その一歩として重要です。
|
ウガンダ ●シルバー・カエンブ国連代表部軍事顧問
要請文は、重要な指摘をしています。(要請文の太字の部分について)この点がまさにエッセンスです。なぜ日本政府はこの場に来ないのでしょうか。こうして国会議員は来ているのに。残念です。
エジプト ●タミン・カラフ外務省軍縮局参事官
この要請文は、まさにわれわれの立場と同じです。われわれは核不拡散条約(NPT)再検討会議で、第6条にある核兵器国の義務を果たせと要求し、核兵器国がみずから実行する日をさんざん待ちました。しかし事態は好転せず、むしろ悪化しています。同時に、多少歴史的にみれば、私たちは楽観的で励まされる情勢のなかにいると思います。それは、これだけ多くの政府が核兵器をなくす協定をどう結実させるかを議論する、そんな時がいま来ているのですから。この会議は、市民社会の働きなしには、成功をみることはできません。NGOが貢献となっていることを高く評価します。今後も連携しましょう。
ガーナ ●マーサ・ポビー国連大使
(志位委員長の演説は)良いステートメントでした。私たちは禁止条約の早期締結を望んでおり、あなた方のこうした積極的なイニシアチブは会議への重要な貢献です。日本から多くのNGOが参加しており、その中にあなたがたのような立場をとる政党があることは、とても良いことだと思います。
サウジアラビア
核兵器の廃絶は今日の世界でますます重要になっています。核保有国の核は非核保有国に対する脅威となっており、この会議の任務を実現することは喫緊の課題です。日本は被爆国であるので、みなさんの訴え(要請文)にはインパクトがあります。こうした活動を歓迎します。
タンザニア ●国連代表部参事官
この国連会議は非常に重要で、新しい踏み出しをしています。核兵器禁止の条約化の活動は新しい次元、局面を迎えています。先ほどの政府代表の発言の中で市民社会の提起から刺激を受けたと述べていたように、あなたがたの活動は会議への貢献となっています。(要請文の)提起を高く評価します。
チュニジア ●モエツ・ラウアニ国連代表部参事官
(在日大使館勤務時代に、日本共産党の大会を傍聴したことがあるとのべたあと)チュニジアはアフリカ連合、アラブ連盟、非同盟の核兵器問題の立場を共有しているけれども、核兵器廃絶をいかにすすめるかという新しい段階に立って、政策の具体化をすすめているところです。(要請文について)日本共産党が核問題でこれだけシャープな問題提起をして、この会議で訴えていることに感銘を受けます。この要請文はよく研究していきたいと思います。
パレスチナ ●リヤド・マンスール国連大使
中東非核地帯をめざす取り組みなど、核兵器廃絶に一貫して努力してきました。要請文の立場に賛成します。
南アフリカ ●ジェリー・M・マツィーラ国連大使
(アフリカ民族会議〈ANC〉の日本駐在代表のさいに、毎年、広島、長崎に行ったことに触れながら)核兵器保有国が参加しなくても、この会議を先延ばしにするわけにはいきません。彼らは抑止力をとなえますが、化学兵器禁止条約に賛成しながら、なぜ核兵器廃絶に反対するのか納得できません。(禁止条約を採択すれば核兵器を違法化でき、悪の烙印をおすことになるという指摘に)その通りです。それが一番重要です。
モロッコ ●オマール・ヒラレ国連大使
核兵器廃絶の国際条約化をなしとげるためには、圧倒的に国際世論の役割が求められています。市民社会の活動は、国連会議に大事な提起と刺激を与えています。あなたがたの提起(要請文)と世界に働きかける活動は大きな意義を持っています。感謝します。
ヨーロッパ
私たちのアプローチと共通 ■ 要請文の立場は理性的
|
アイルランド ●ヘレナ・ノーラン外務省軍縮不拡散局長
(要請文は)私たちのアプローチと全く一緒です。広島、長崎の経験がこの会議を開催に導きました。核兵器禁止の問題は、道徳的と同時に、法的にも取り組む義務があります。アイルランドでは全政党、国民が禁止条約を支持しています。日本からこの会議に国会議員が来てくれうれしく思います。引き続き参加を期待します。
オーストリア ●トーマス・ハイノッチ軍縮大使
(要請文は)たいへん良いものです。この会議の目的を支持していただき感謝します。日本でも多くの人に訴えて支持を広げていただくよう希望します。オーストリアでは核兵器廃絶はすべての政党が支持し、憲法でも核兵器禁止をうたっています。今度の会議は最初の一歩です。今後、一つ一つ具体的措置を積み上げていきます。化学兵器や生物兵器では禁止条約を実現しました。核兵器でできないことはありません。核保有国は核兵器禁止条約に意味はないといいます。では、なぜあれほど反対と騒ぐのか。条約に大きな意味があるからでしょう。
|
オランダ
(NATO加盟国で唯一、国連会議の開催に反対でなく棄権を表明)
核兵器の禁止、廃絶という目標は共有します。しかし検証手段や核保有の参加などの点で異論があります。この会議への参加について、友好国と協議はしましたが、自ら決めました。
ローマ法王庁(バチカン市国) ●国連代表部・サイモン・カサス神父
会議での(志位委員長の)演説に感謝します。要請文の立場は、理性的なもので、よく理解できます。(まず禁止条約で一歩を踏み出すという指摘に)その通りですね。
中南米・カリブ海
圧力あっても立ち止まらない ■ 日本国民の気持ちを伝えてくれた
ウルグアイ
政府と政党、市民社会は相互的なものです。大事なことは、ともに協力して声を大きくしなければ、条約は達成されないと思います。この要請文には、われわれがとりくんでいることが書かれています。その点で感銘をうけます。
|
エクアドル ●オラシオ・ボージャ国連大使
われわれは、1月の中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)首脳会議でこの会議の支持を表明し、この会議の成功に全力を尽くしているところです。要請文にはとても大事なポイントを突いています。こうした声をあげてほしいと願っています。
エルサルバドル(CELAC議長国) ●ルーベン・イグナシオ・サモラ国連大使
CELACの国々は小さいが、一緒になれば力は何倍にもなります。最大の核保有国は反対するでしょう。いろんな国からの圧力もあります。しかし立ち止まることはできません。100、130、160と各国が禁止条約に署名すれば、残りはわずかの国となります。核兵器に悪の烙印を押す、保有は誤りで恥ずかしいと思わせることは、すべての平和、市民団体の戦術です。友人のあなた方がいることはうれしい。私たちは勝利します。
キューバ ●アナヤンシ・ロドリゲス・カメホ国連大使
要請文の考え方を共有します。核保有国が参加するのがベターですが、たとえ参加しなくても禁止条約をつくることは意義があり、国際社会に重要なメッセージを送ることになります。非同盟国は多様です。「包括的」禁止条約という主張もありますが、禁止条約でまず一歩をというのが多数でしょう。私たちは、全面核廃絶への一歩という明確な規定が含まれた禁止条約であれば賛成します。(禁止条約と世界の世論の力で核兵器全面廃絶に進むという考え方に)全面的に同意します。この要請文は同僚(の大使)に届けたい。この問題で日本共産党と協力していきたい。
|
コスタリカ ●フアン・カルロス・メンドーサ・ガルシア国連大使
(要請文について)今回は、歴史的なステップを踏み出す会議であり、目的達成のための必要な戦略、戦術をとる、そうした意見を共有できるものです。核兵器禁止条約を締結することは、核兵器保有国に対して、大きな手段を持つことになります。それによって、国際社会は政治的・道義的かつ法的基盤を持って、核兵器廃絶にいたる交渉に参加することを要求できることになります。日本の人々の気持ちを伝えてくれてありがとうございます。
ブラジル ●マウロ・ビエリラ国連大使
(要請文について)これはまさにわれわれの立場です。(禁止条約で)核兵器に悪の烙印を押し、核兵器に依存する国々を不安にさせ、積極的に圧力をかけていくことが必要です。核兵器に依存する国々の政府の安全保障観と、それらの国の市民のそれは違います。日本の市民社会は大切な役割を果たしています。
ベネズエラ(非同盟運動議長国) ●ラファエル・ラミレス国連大使
非同盟諸国は結束してこの会議の成功にむけ働きかけます。核兵保有国に義務を課すような結論に持っていくことが大事、その立場で取り組みます。条約の早期実現のために努力します。この会議でのあなた方の姿勢、日本の被爆者がいかにひどい被害をこうむったか、思いをはせたい。核兵器は、人道的な見地から絶対に許されないものです。それを支持するどのような道理もありません。市民が世界各地で(核兵器廃絶の)運動を起こすことが大切です。
メキシコ ●ミゲル・ルイスカバーニャス外務副大臣
(要請文の太字の部分を自ら読み上げて)ここの太字の部分、まったく同感です。「できるだけ早く」という部分も考えが一緒です。残念ながら一部の国が会議の外にいます。しかし、それらの国も将来参加することもあるでしょう。多くの国がこの条約に調印すれば、地域と世界の平和に寄与します。簡潔で、目的が明確な条約を、できるだけ早くつくりたいと考えます。先に条約を採択し、いつ加盟するかは各国が決めればいいでしょう。交渉プロセスは開かれたものです。市民社会が参加し、それが各国に影響を与えています。
議員・NGO
イギリス ●ファビアン・ハミルトン下院議員(労働党・影の内閣・平和軍縮大臣)
被爆者の初日の演説に感動しました。彼の訴えは、私がここにいる理由でもあります。次の総選挙(2020年)で勝利し、禁止条約に署名したいと考えます。
カナダ ●リンダ・ダンカン議員(PNNDカナダ)
カナダ政府がこの会議をボイコットしたことは、多くの国民に衝撃を与えました。だから、私は参加しようと考えました。ここで話し合ったことを帰国してからの活動に生かしたいと思います。
国際NGO ●「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)ベアトリス・フィン事務局長
志位委員長が参加されたことに感謝します。この要請文はたいへん役立つものです。核保有国は今回の会議に参加しませんが、会議を注視しています。彼らは追いつめられているのです。国会議員の参加は大事です。流れを変える役目を果たすことができます。
|