2017年3月28日(火)
主張
避難指示の解除
国・東電の責任投げ捨て許さず
東京電力福島第1原発事故で、国が福島県内に設定した避難指示区域が31日と4月1日、4町村で解除されます。今回対象となる住民は3万2千人と過去最大です。避難指示区域の面積は最大時の約3分の1になりますが、帰還する人も、帰還しない人も、多くの被災者の心は揺れています。
解除と一体に、国と東電が被災者の住宅支援や賠償を次々と打ち切ったり、縮小させたりしていることが、被災者の苦しみに追い打ちをかけています。解除を、国・東電が被災者への賠償・支援から手を引く「区切り」にすることは認められません。
故郷を奪われた苦しみ
6年前の原発事故後、国は放射線量の高い周辺11市町村、約8万1千人に避難指示を出しました。その後、解除が順次行われ、これまでに5市町村で解除されたものの、実際戻った住民の割合は平均十数%です。
31日解除予定の浪江町の住民意向調査でも「すぐに・いずれ戻りたい」は2割未満にとどまります。町民は、病院や商店の未整備、除染の不徹底などへの不安を訴えます。戻ると答えた人も「家族一部での帰還」が4割に上ります。事故でバラバラにされた家族が元に戻れない現実を示しています。
しかも、国は、解除とセットで支援打ち切りをすすめています。避難を解除された区域からの避難者は、仮設住宅からの退去が順次求められます。
東電が解除にともない、精神的苦痛への賠償(月10万円)を来年3月で終了させようとしていることは重大です。営業・営農への賠償も縮小する方向です。“事故は終わった”といわんばかりです。
また、避難区域外からの「自主避難者」は、生活基盤を支える「命綱」といえる住宅無償提供が3月末でなくなります。4月以降の住宅が決まっていない自主避難世帯もあり、このままでは路頭に迷う避難者が出かねません。全国で100にのぼる地方議会が無償提供継続を求める意見書を可決し、独自の支援策をとる自治体も生まれています。国のやり方の道理のなさは明白です。
避難の有無にかかわらず、原発事故で住み慣れたふるさとを壊され、6年間苦しみ抜いた被害者であることに何の違いもありません。東電による原発事故の収束の見通しもない中で、国が被災者に無理に「自立」を迫り、「帰還」に追い立てることは筋が通りません。
今年の東日本大震災追悼式で安倍晋三首相が「原発事故」の言葉を使わなかったことは、再稼働と一体で「福島切り捨て」をすすめる異常な姿勢を象徴しています。こんなやり方は許されません。
加害者責任は免れない
前橋地裁は17日、福島原発事故で国と東電には過失があり、賠償責任があることを明確に認める初めての判決を出しました。国・東電の加害責任は明白です。「生まれ育った故郷を返して」と全国30件、約1万2千人の被災者が訴訟を起こしています。この痛切な思いに国・東電は真剣に向き合うべきです。
被災者を分断する線引きを行うのでなく、すべての被災者の生活と生業(なりわい)が再建されるまで、国と東電は等しく、長期的に支援していくことこそ必要です。