2017年3月20日(月)
きょうの潮流
飛脚が列島をめぐるようになったのは、江戸期に入ってからでした。制度やネットワークの形成とともに扱う荷物も増え、多様化。社会の成り立ちに深くかかわっていきます▼需要に合わせて飛脚もさまざま。定期便は並便、急送は早便、超特急便は仕立便という具合です。東海道をリレー方式で走った仕立便は江戸と京阪を最も短くて4日で結び、そのぶん料金もはね上がったそうです(巻島隆著『江戸の飛脚』)▼時は移り現代の飛脚ともいえる宅配ドライバーたちが運ぶ荷物は、年間37億個にも達しているといいます。急成長をつづけるネット通販と利用者の増大を背景に、この20年間で急増しています▼速くて安い。市場の拡大は激しい競争を生んでいます。時間指定や再配達。手厚いサービスの一方で現場は忙しくなるばかり。しわ寄せがかかるドライバーは一つの荷物を数分のペースで運ばなければならないほど。長時間労働にもつながり、心身の不調を訴える労働者が増えつづけています▼宅配大手のヤマト運輸は今春闘でサービスの一部見直しなどを労使で合意しました。しかし、ドライバーの激務改善や慢性化する人手不足の解消につながるかどうかは不透明です。同社は残業代の未払いで追及されています▼時代は変わって流通手段も格段に進歩しながら、働く人々への負担はどれだけ減ってきたのか。それでもまだ政府は過労死ラインまで働かせようとしています。まるで労働者だけを社会の発展から取り残そうとするように。