2017年3月19日(日)
きょうの潮流
避難民、たかり屋、賠償金で遊んでる、放射能がうつる、ばい菌…。どれだけの心ない言葉が痛めた胸をさらに傷つけていることか▼おとなから子どもまで、原発事故によってふるさとを追われた人たちが遭っているいじめや差別。ある住民アンケートでは6割が避難先で「あった」と答えています。先日、福島の被災地を取材した際も悪口や陰口の類いは、ほとんどが味わっていると耳にしました▼「加害者の責任がはっきりせず、被害者の立場や権利が曖昧にされてきた。それが、いじめや住民の心の分断にもつながっている」。浪江町で行政に携わる人は加害の構造が明確にされてこなかったことが根っこにあるといいます▼福島原発事故の賠償責任は国と東京電力にある―。群馬県内に避難した住民らの集団訴訟で、前橋地裁は国の加害責任を認める画期的な判決を示しました。巨大津波は予見できた、あの事故は防げたのに対策を怠ったと▼東電の責任については「経済的な合理性を安全性に優先させたと評されてもやむをえない対応で特に非難に値する」。津波対策を取らせる権限を行使しなかった国も「著しく合理性を欠き違法」だと批判しました▼いまも原発事故の苦しみのさなかにいる福島の被災者。取材では、政府がいまだに安全神話にしがみつき、原発を再稼働させていることへの怒りや悲しみの声も多く聞きました。判決が認めた誰もが平穏に暮らせる権利。それを脅かす「人災」とのたたかいはこれからも各地で続きます。