2017年3月13日(月)
主張
南スーダン撤収へ
安倍政権は派兵の誤り認めよ
安倍晋三政権は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵している陸上自衛隊部隊を5月末をめどに撤収させることを決めました。現在、自衛隊の部隊が参加するPKOは南スーダンだけです。そこからの撤収は、安倍首相が「積極的平和主義」を掲げて自衛隊の海外派兵を拡大しようとしてきた狙いの破綻を示しています。安倍政権は撤収理由を治安の悪化ではないと説明します。しかし、深刻な内戦状態が続く南スーダンに派遣されている自衛隊員が戦後初めて「殺し、殺される」という危険に置かれている現実を認めないのは極めて無責任です。
参加5原則は破綻ずみ
安倍政権はこれまで、内戦状態が続き、戦闘が繰り返されている南スーダンの状況が、武力紛争停止の紛争当事者間の合意(停戦合意)などPKO法の「参加5原則」に反していることを隠し続けようとしてきました。その象徴が、南スーダンの陸自派兵部隊が作成した「日報」の隠(いん)蔽(ぺい)疑惑です。
防衛省・自衛隊が組織的に隠蔽しようとした疑惑のある「日報」などの報告文書は、公になった後も大部分が黒塗りにされています。それでも、昨年7月、南スーダンの首都ジュバで政府軍と反政府軍との間で起きた大規模戦闘について、陸自宿営地近くでも「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」が繰り広げられていたことが生々しく明らかにされています。しかし、安倍政権は当時、「散発的な発砲」と偽り続けました。
南スーダンの反政府軍についても、国内に支配を確立した領域を持たないなどとし、「紛争当事者」ではないとか、「国家に準ずる組織」ではないからといって、7月の大規模戦闘も「法的な意味での戦闘行為ではない」(稲田朋美防衛相)という派兵ありきの独善的な解釈を続けてきました。一方で、南スーダンに昨年5月に派遣された自衛隊員の家族説明会の資料では「反政府派支配地域」や「戦闘発生箇所」が地図で明示されるなど、説明は矛盾だらけでした。
昨年11月の安保法制=戦争法に基づく陸自派兵部隊への「駆け付け警護」の新任務付与に関しても、家族説明資料(同年8月)では、「南スーダンがPKOの活動に同意し、受け入れている状況では、武力紛争に巻き込まれることはない」と“安全”を強調しました。
ところが、昨年7月の大規模戦闘時の「日報」は「(ジュバ)市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」と明記しています。国連は、南スーダン政府軍がPKOに対しさまざまな任務妨害や要員への襲撃など敵対行為を繰り返していることを報告しています。
自衛隊がPKO要員らを救助するため武器も使用できる「駆け付け警護」を行えば、戦闘に「巻き込まれる」可能性はさらに高まります。深刻な実態をごまかし続けた安倍政権の責任は重大です。
自衛隊は直ちに撤収を
南スーダンへの派兵を続ければ、憲法が禁止する海外での武力行使になる危険は明白です。首相は今回の撤収方針について自衛隊の活動に「一定の区切りをつけることができると判断した」などと苦しい弁明をするのではなく、派兵の誤りを認めるべきです。
「南スーダンからの自衛隊撤収は5月末ではなく、直ちに行え」の声を大きく上げる時です。