2017年3月10日(金)
主張
安倍氏の改憲執念
総裁任期延期も準備のためか
先日の党大会でこれまで「2期6年」となっていた総裁の任期を、「3期9年」に延長すると決めた自民党の安倍晋三総裁(首相)が、大会でのあいさつで、憲法の「改定」案を国会で決めて国民投票に提起する「憲法発議」の議論を「リード」することを強調し、改憲への執念を改めて示したものとして注目されています。安倍氏が来年9月の総裁選で3選されればこのあとも長く総裁を続けることになり、任期の延長を国民に改憲を押し付けるために利用する危険は重大です。安倍政権の手による改憲に反対し、憲法を守り生かす世論と運動を広げることが重要です。
「具体的な議論をリード」
「今年は憲法施行70年の節目の年。未来を見据え、新しい国づくりに取りかからなければならない。自民党は憲法改正の発議に向けて、具体的な議論をリードしていく。それこそが自民党の歴史的使命だ」―。当日(5日)インターネットを通じても流された安倍氏のあいさつは、相変わらず何のために、憲法のどの条文を変えるか明示しない、“初めに改憲ありき”というしかない「改憲先行」のものでしたが、言葉の端々に、改憲に向けての異常な高ぶりを示したものだったのは明らかです。
自民党内でも「改憲派」で知られる安倍氏はこれまでも事あるごとに改憲への執念を繰り返していますが、昨年の参院選で衆院に続き参院でも改憲の発議に必要な3分の2の議席を確保して以降、発言はいっそうエスカレートしています。自らの強い指示で「改憲の発議に具体的な歩みを進める」と明記した今年の党大会での運動方針と、そのために「議論をリードしていく」と明言した党大会での安倍氏のあいさつには、改憲への一切のためらいがありません。
安倍氏は自民党総裁であるとともに首相であり国会の議員です。憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定めています。同条は憲法で国家権力をしばる、立憲主義の原則に基づいたものです。「改憲に向けての議論をリードしていく」と明言してはばからない安倍氏の態度は、まさに憲法が定めているその「憲法尊重擁護の義務」さえかなぐり捨てたものというほかありません。
安倍氏が「改憲」と言いながら、狙いとする国家緊急権の明記にせよ、憲法前文と9条の改定による平和主義の破壊にせよ、中身に触れないのは、改憲が国民に支持されておらず、その批判を恐れるためです。しかし、もともと憲法の尊重擁護義務を守ろうとしない安倍氏がいくら隠しても、憲法破壊の危険性は変わりません。安倍氏が触れなければ触れないほど、危険はますます鮮明になるばかりです。
危険な狙いを許さず
自民党が今回、総裁の任期を「3期9年」に延長したのは、安倍氏に代わる総裁候補が見えにくい党内事情が主な理由ですが、任期を延長すれば、来年末で衆院議員の任期が切れる総選挙の時期なども選択が広がります。改憲発議を準備する衆参の憲法審査会は昨年から再開しても審議が難航しており、そのためにも任期延長で時間を稼ぎ、準備を進めたいという思惑が安倍氏と周辺にあるのは間違いありません。そうした狙いを許さない世論と運動が急がれます。