2017年3月8日(水)
共謀罪 「10日閣議決定」先送り
強まる批判、与党内にも疑義
自民党は7日の政調審議会で「共謀罪」法案の審査を見送りました。同法案への対応について党内手続きを「慎重」に進めている公明党に配慮したものです。与党の了承は10日以降にずれ込むことになり、政府が目指した10日の閣議決定は先送りされる見通しとなりました。
政府・与党は当初、7日の自民党政審と与党政策責任者会議で「共謀罪」法案を了承し、10日に閣議決定して国会に提出する段取りを描いていました。政府が法案の目的を「テロ対策強化」としながら条文に「テロ」の文言を盛り込まなかったことなどに対し、「テロ対策は口実にすぎない」と国民の批判が強まっています。与党内からも法案への疑義が出ており、政府は条文「修正」を迫られるなど混迷しています。
解説
「テロ対策」口実崩れ/批判広がり混迷
「共謀罪」法案をめぐる政府・与党内の混迷は自業自得のジレンマといえます。
もともと政府は、2003年に国会承認された国際組織犯罪防止条約の国内法化だとして「共謀罪」の必要性を主張してきました。
他方で安倍政権は東京オリンピック・パラリンピック(2020年)での「テロ対策」として「共謀罪」の体系整備が必要だと強調し、「テロ等準備罪」として「従来の共謀罪とは全く別物」などと宣伝してきました。
しかし、国際組織犯罪防止条約は本来、マフィアや暴力団による麻薬密売や人身売買などの経済犯罪対策のためのものです。「テロ」とは重ならない条約のため、「共謀罪」法案のなかに「テロ対策」を明記することができなくなりました。こうしたことは自民党内でも、いわば当たり前のことと暗黙に“自覚”されています。
ところが「テロ対策」という「宣伝」と矛盾をきたすなか、「テロ対策は口実にすぎない」との批判が広がりました。これに対し、慌てて「テロリズム集団」の文言を法文に挿入するなどの動きになっていますが、関係者の間では“茶番”と認識されているのです。
「森友」疑惑で国民の怒りが強まり、安倍政権と自民党への批判が強まっています。さらに豊洲市場問題で厳しい批判を浴びて夏の都議選に危機感を強める自民、公明両党には、「共謀罪」法案の扱いに慎重姿勢を示すことで、何とか批判をかわそうとの思惑もあります。
(中祖寅一)