2017年3月5日(日)
きょうの潮流
「赤信号みんなで渡れば怖くない」―。ずいぶん前ですが、漫才ブームのときに毒舌が売りのコンビがはやらせました。交通標語をもじり群集心理をついたフレーズはちまたでもよく耳にしたものです▼石原慎太郎元都知事の記者会見を聞きながら思い出しました。豊洲への市場移転問題で都議会の百条委員会に証人喚問されている渦中の人物。「座して死を待つつもりはない」とまでいいながら、相変わらず責任逃れに終始。「みんなで決めた」とくり返しました▼土壌汚染がひどい東京ガスの跡地をなぜ選んだのか。当初は難色を示していた相手との交渉経過は。環境基準をはるかに超えた有害物質が検出されても見直さなかったのは。跡地を購入した際に東京ガスに土壌汚染対策の追加負担を求めないと約束したのはなぜか▼事実の解明どころか数々の疑惑にも専門家が決めた、部下に一任した、記憶にないを連発。そこには食の安全や市場にかかわる人たちの健康、巨額をかけながら混迷させていることに思いを致すそぶりさえありませんでした▼唯一うなずけたのが都議会の責任に言及し、「自民党も公明党も賛成して」と口にした場面。疑惑にふたをし、都民不在のまま市場移転をごり押ししてきた自公の罪は歴代の知事に勝るとも劣らないほど重い▼ただし、やっぱりそこは石原さん。「議会の総意」だったと。とぼけるのもいいかげんにしてもらいたい。多くの都民や市場関係者とともに、一貫して反対してきた党の存在もお忘れか。