2017年3月5日(日)
主張
保険料の「滞納」
住民を追い詰める対応やめよ
国民健康保険料(税)と後期高齢者医療制度保険料を「滞納」した世帯数・人数(昨年6月時点)を、厚生労働省が公表しました。国保で約312万世帯が、後期医療で約23万人が「滞納」しており、多くの人が保険料の支払い困難に直面している実態を浮き彫りにしています。「滞納」に対する“ペナルティー”として行われる正規保険証の取り上げ数も国保で約118万5000世帯、後期医療で約2万3000人にのぼります。負担能力を超える保険料を払えずに保険証を失い、必要な医療も受けられない―。こんな事態をいつまでも続けることは許されません。
矛盾深める「資格証」発行
年間所得250万円の4人世帯に年間40万〜50万円以上の国保料の支払いが求められるなど、国保料の高騰が各地の市区町村で大きな問題になっています。負担能力をはるかに超える保険料を払えず、やむなく「滞納」する世帯は少なくありません。厚労省の発表では、「滞納」世帯数は昨年より若干減ったものの、依然300万世帯を超える高水準なのは深刻です。
国保料「滞納」が続く世帯には、正規保険証を取り上げられ、医療機関窓口で全額(10割)支払わなくてはならない「資格証明書」や、有効期間が1カ月〜6カ月の「短期保険証」が交付されます。
生活が苦しく保険料を払えない世帯が窓口で全額払えるはずもなく、「資格証明書」を交付された世帯の人が、経済的理由で病院にかかれず、治療遅れになって命を落とす悲劇が後を絶ちません。
情け容赦ない保険証取り上げの中止を求める市民団体や日本共産党の粘り強い運動と追及で、機械的な運用に歯止めをかけた自治体も生まれています。今回の厚労省発表では、神奈川県の「資格証明書」発行が前年の約2万3000世帯から約9500世帯へ“激減”しました。横浜市が従来の“原則発行”から“抑制”へと転換した影響です。その分「短期保険証」が増加したものの、「短期」の有効期限を1年に延ばす措置もとりました。市は、「資格証明書」は収納率向上に効率的でないなどと判断したとしています。保険証の一律取り上げという、乱暴なやり方の行き詰まりを示しています。
一方、国が自治体に保険料収納率の向上を競わせる中で、「滞納世帯」への財産差し押さえなどが、約29万8000件と過去最多を更新したことは重大です。収納率向上の「先進」とされた自治体では、自動車修理業経営の老夫婦が自宅や年金を差し押さえられ、生活が成り立たなくなる悲惨なことまで起きています。住民の暮らしの基盤を崩壊させる異常な取り立て、差し押さえをやめるべきです。
後期保険料アップ中止を
安倍晋三政権は2018年度から、国保の財政運営を市町村から都道府県に移行させる計画です。これを国保の保険料引き上げに連動させてはなりません。
国会で審議中の17年度予算案には、後期高齢者の保険料の軽減措置を、4月から段階的に縮減することが盛り込まれました。実施されれば、いまでも23万人以上が保険料を払えない状況を、ますます深刻化させます。「後期医療」でもきびしい取り立てが加速しかねません。国民が安心して医療にかかる土台を掘り崩す保険料アップは中止すべきです。