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2017年2月27日(月)

厚労省 医療提供「適正化」言うが

労働改善ほど遠く、医師数抑制

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 厚生労働省は、医療現場の慢性的な人手不足をめぐって、人員確保や、地域・診療科によって人手が偏る問題の是正を検討しています。3月までに「働き方」の見直しを取りまとめ、対策に反映する予定です。医療提供体制の「適正化」を口実にして実態に逆行する方向を示しています。


 この間、医師・看護師の働き方の見直しを検討会で議論し、昨年末に中間整理をまとめました。この中では、医療の持続可能性を掲げて「従事者の配置に重きを置く発想を転換し、多様な働き方やキャリアを実現する」と方向づけ、人員増からは目を背けています。

安全性を脅かす

 医療機関に勤める医師は、厚労省が示す過労死ライン(月残業80時間以上)にあたる週60時間以上働く人が4割に達し、20代は約6割にのぼります(2012年)。看護職員は、16時間以上の2交代制夜勤が5割を超え、女性労働者の平均と比べて2倍近い3割が切迫流産になっています(14年)。

 中間整理も「医療現場では過重労働や超過勤務が恒常化し、医療の質や安全性も脅かされる」と指摘しています。しかし、肝心の対策は、看護師や薬剤師、介護職の業務を広げ、本来は医師が行う医療行為を増やすと明記。医師以外に負担増を押し付ける考えです。

 育児中の女性と医療機関の労働条件を照会する仕組みの構築▽住民の健康管理を支援し、医療需要を抑制―も示しましたが、過酷な労働の抜本改善にはほど遠いものです。

医療団体が懸念

 需給・偏在対策は、厚労省医師需給分科会が15年末から先行して議論してきました。

 3パターンの需給推計を行いましたが、病床削減・再編計画の地域医療構想を前提にして“医師数が過剰になる”結果を出しました。同分科会は、人員増より偏在是正の方が「特に重要だ」と指摘。17〜19年度に計画されている大学医学部の追加増員について「本当に必要か慎重に精査する」として人員抑制の方向を示しました。

 医師の偏在対策では▽地域で十分にある診療科の開設について、保険医の配置・定数や開業を規制▽医療機関の管理者にへき地勤務を義務付け―など統制的手法を並べました。

 これに対して医療団体の委員からは、「需給推計は、1個仮定が違うだけで全然数値が違ってくる恐ろしい数字だ」などの懸念が相次ぎました。推計し直すことになり、分科会は16年10月から開かれていません。

図

35カ国中の30位

 日本の人口1千人あたりの臨床医は、経済協力開発機構(OECD)による加盟国調査(2016年)で35カ国中30位の2.4人にすぎません。日本医師会の15年調査では、全国の大学病院本院の54.3%が、東京都区部の病院の37.6%が医師不足だと回答しています。

 地方も都市部も医師不足は明白であり、医師数抑制路線からの転換こそが必要です。

 日本医療労働組合連合会は、安全・安心の医療の実現へ「実効策は猶予できない緊急課題だ」と表明しています。対策として1日8時間以内を基本にした労働時間の上限規制や、勤務間に一定以上の休息時間を確保する「インターバル」規制、夜勤回数の制限とともに、医療従事者の大幅増員を求めています。(松田大地)


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