2017年2月25日(土)
主張
「君が代・日の丸」
保育所・幼稚園への強制やめよ
安倍晋三政権が保育所や幼稚園でも「国旗」「国歌」に「親しむ」ようにすることを盛り込んだ指針案をまとめたことに驚きが広がっています。保育所については、厚生労働省が今月公表した「保育所保育指針」改定案に3歳以上の幼児について「行事において国旗に親しむ」「国歌、唱歌、わらべうた…に親しんだり」と記載しました。幼稚園については、文部科学省が「幼稚園教育要領」改定案で、現行にある「国旗」に加えて「国歌」にも「親しむ」としました。
歌詞理解できない幼児に
もともと「君が代・日の丸」は戦前、日本の侵略戦争のシンボルとして使われたもので、拒否感をいだく国民は少なくありません。「君が代」の歌詞は“天皇の世の中が未来永劫(えいごう)続きますように”というもので主権在民という国のあり方に真っ向から反する内容です。
1999年の国旗国歌法制定の際に国民世論は二分し、政府は「義務付けは行わない」「無理強いして斉唱させれば内心の自由に関わる」と繰り返し答弁しました。ところが自民党政権はその後、こうした約束をふみにじり小中高校での強制をエスカレートさせました。安倍政権は一昨年大学への押し付けをはじめ、今回ついに幼児にまで広げようというのです。
歌詞の意味もわからない子に「わらべうた」のように「君が代」を歌わせる―。幼児には「国」とは何かも理解できません。幼い子どもたちに国家権力が「君が代・日の丸」への“愛着”をすり込むのは、憲法19条「思想良心の自由」に反し、幼児の心を都合よく操作することになりかねません。幼児期にそうしたことを繰り返せば、主体的な子どもを育てるという点でも大きな問題です。
小中高校への長年にわたる「君が代・日の丸」の強制は、教育に欠かせない自由や自主性を奪ってきました。
東京都では起立・斉唱の職務命令に従わなかったために処分された教職員がのべ500人近くにのぼります。子どもにたいしても「君が代」を大きな声で歌うよう強要することなどが起きています。
一方、東京都の教職員の処分をめぐる一連の裁判では、起立・斉唱をしないことは各人の「歴史観・世界観」の問題だとして、重い処分を科すことに一定の歯止めをかけています。最高裁の裁判官からは「不起立と懲戒処分が繰り返される事態」を「一日も早く解消し、これまでにまして自由で闊達(かったつ)な教育が実施されていくことが望まれる」との意見が出ています。
強制を保育所などに広げることは許されません。
安倍政権の危険な暴走
政府の審議会は、保育指針、幼稚園要領の改定に関するいずれの答申でも国歌に言及しませんでした。それが一転改定案に国歌が入ったのは政治家からの圧力でもあったのか―。「愛国心」をふりかざし、従順に国に従う国民を育成しようという安倍政権の危険な暴走は認められません。教育勅語を幼児に暗唱させる大阪の「森友学園」と首相側との関係が問題となっていますが、「君が代・日の丸」押し付けは、偏狭な「愛国主義」を助長する点でも重大です。
保育園、幼稚園への「国旗・国歌」押し付けに強く反対するとともに、全学校での強制をなくすことを訴えます。