2017年2月20日(月)
主張
「働き方改革」
国際基準を踏まえるべきだ
安倍晋三首相が議長をつとめる「働き方改革実現会議」が先週、残業時間の上限を年間720時間などとする原案を示しました。残業の限度時間を週15時間、月45時間、年間360時間と定めた「厚生労働大臣告示」の2倍もの残業を許容する重大な内容です。「働き方改革」の名に値しない、「働き方改悪」案を断じて容認することはできません。
ILO条約批准後ろ向き
悲惨な過労死事件を引き起こす長時間労働の厳格な規制は日本社会の緊急の課題です。なのに、なぜこんな案しか示せないのでしょうか。それは、日本政府が世界で当たり前の労働のルール、国際労働基準を無視しているからです。
労働時間に関する有効なILO条約は、18本存在します。工業分野における労働時間を1日8時間・週48時間に制限する条約(第1号)をはじめ、最低3労働週の年休を保障する年次有給休暇条約(第132号)、パート労働者に均等待遇を保障するパートタイム労働条約(第175号)などです。日本は、ただのひとつも批准していません。「先進国」で批准ゼロは、日本と米国だけです。
この問題は、日本共産党の田村智子副委員長が参院予算委員会(1月31日)で取り上げました。田村議員は、「労働時間という最も基本的な労働条件で国際基準を受け入れようとしていない。この政府の姿勢の下で過労死という、世界が驚く異常な事態が日本で起きている」と指摘しました。そして1号条約を具体的に示して、「日本は、批准に踏み出していって国際基準に追い付き、さらに前に行くことが必要ではないか」と政府を追及しました。
これに対して、塩崎恭久厚生労働相は「わが国は三六協定の締結によって(ILO第1号条約が定める)週48時間を超えて上限を定めることができるために、批准については慎重な検討が必要だ」と答弁しました。
これは、逆立ちした発想です。国際社会が求めているのは、条約を批准して国内の法律を整備することです。国内法の遅れを理由に条約批准を拒否するという日本政府の姿勢は、厳しく批判されなければなりません。マスメディアも「長時間労働をなくすには、まず、(ILO)条約を批准することです。そして、それに従って国内法を整備すればいいということです」(「東京」1月16日付)と指摘しています。国際基準を踏まえた改革こそ実行すべきです。
日本共産党は、国際労働基準にのっとった労働立法を提案してきました。労働時間規制にかかわる問題では、残業上限規制に例外を設けず、週15時間、月45時間、年360時間とする大臣告示を法定化するとともに、勤務から次の勤務までのあいだに連続11時間の休息時間を設けること、長時間労働の温床となっている裁量労働制等の規制強化など、労働基準の改正案を提案しています。
野党共同法案の審議を
共産党と民進党、自由党、社民党は、現在青天井となっている残業時間の上限規制や、勤務間インターバルの新設、裁量労働制の要件の厳格化などを柱とする長時間労働規制法案を国会に提出しています。長時間労働の是正というのであれば、この野党共同法案をただちに審議するときです。