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2017年2月17日(金)

主張

建設石綿被害判決

国は補償制度創設に踏み出せ

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 建設現場の建材に含まれたアスベスト(石綿)によって、石綿肺や肺がん、中皮腫にかかった元建設労働者や、その遺族が国や建材メーカー41社を相手に損害賠償などを求めた建設アスベスト訴訟で、国の責任を認める判決が14日、札幌地裁で出されました。

 建設アスベストをめぐる裁判で国が断罪されるのは5度目です。国は裁判を長引かせるのではなく、被害者、遺族に謝罪し、補償に足を踏み出すべきです。

5地裁で国の責任を認定

 アスベストは、耐熱性、断熱性、耐火性、防音性などに優れ、加工しやすく、安価で「奇跡の鉱物」といわれ、多くの産業分野で使用されていました。一方、髪の毛の5000分の1という超微細な繊維が人間の肺組織に刺さり、治療が困難な深刻な病気を引き起こすことが問題になっています。

 日本で使われたアスベストのうち約8割が建材です。建設労働者に被害が急増し、2008年から国と建材メーカーを相手取って全国六つの地裁に提訴されました。横浜以外の東京、福岡、大阪、京都、札幌の五つの地裁判決は、いずれも国の責任を認めました。

 建設現場では、防じんマスクの着用が重要な防止策です。にもかかわらず国は、防じんマスク着用を義務付けることなどを怠りました。それについて一連の判決は、国が規制の権限を行使しなかったことは違法だと認定しました。

 昨年の京都地裁判決では、一定以上のシェアを持つ建材メーカーに対しても、“被害者がその建材に暴露した可能性が高い”として企業の賠償責任を認めましたが、今回の札幌地裁判決は「特定できない」との理由で認めませんでした。しかし、同判決も、建材メーカーが製造販売したアスベスト含有建材が、肺がんや中皮腫などを引き起こした「事実を否定することは困難である」と言わざるを得ませんでした。建材メーカーの責任が免れないことを示しています。

 アスベストの危険性は、世界では1950年代に肺がん、60年代には中皮腫との関連性が明らかになっていました。欧州諸国は80年代から使用を禁止しました。日本でも50年代から医学的知見が確立し、国も建材メーカーも危険性を十分認識できる状況にありました。

 ところが、日本では、60年代の高度経済成長期に輸入を伸ばし、90年代まで大量のアスベスト含有建材が使われました。

 国は、建築基準法などでアスベスト建材を指定し、普及をはかりました。建材メーカーのなかには、海外に「ノンアスベスト製品」を輸出し、国内ではアスベスト建材を販売する企業もありました。日本で禁止されたのは2004年で、あまりにも遅すぎる対応です。被害を拡大させてきた国、メーカーの姿勢が厳しく問われます。

司法の指摘を受け止めよ

 全国の建設アスベスト訴訟の本人原告668人のうち、半数以上が亡くなりました。「命あるうちに解決を」「裁判によらず補償を」―。被害者や遺族にとって「建設石綿被害者補償基金制度」の創設は切実な願いです。

 札幌地裁判決は、「建設作業員が被った損害を補てんするための何らかの制度を創設する必要がある」と述べました。司法から繰り返される指摘を受け止め、生かすのが政治の責任です。


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