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2017年2月16日(木)

残業基準緩和 過労死増の危険

年間上限は2倍に 月100時間も検討

安倍政権の「働き方改革」検証

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 14日、政府の「働き方改革実現会議」で、年720時間(月平均60時間)までの残業時間を容認するなどとした政府案が出されました。過労死・過労自殺を繰り返さない、実効性ある労働時間の規制になるのか、検証します。

 (深山直人、行沢寛史)


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「大臣告示」をなきものに 

 政府案の最大の問題は、残業時間を月45時間、年360時間までとする「限度時間」(大臣告示)を緩和し、骨抜きにすることです。

 安倍首相は、残業が青天井になっている原因に、残業の法的上限がないといいます。しかし、今でも「大臣告示」で残業の上限が定められています。

 「大臣告示」は、残業をさせる際に労使が結ぶ「三(さぶ)六(ろく)協定」の限度基準です。ところが、「特別条項」を締結すれば、この基準を超えて青天井の残業が可能となります。

 長時間労働の是正がすすまないのは、「大臣告示」に法的拘束力がなく、「特別条項」で青天井にできる仕組みになっているからです。

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 政府案は、この限度基準を法律に明記するとしながらも、別の労使協定を結べば、年720時間(月平均60時間)まで可能となり、大臣告示の基準を緩和するものです。

 安倍首相は、日本共産党の笠井亮衆院議員の質問(2日)に対し、現在の限度基準を「基本」だと答弁していましたが、その「基本」を骨抜きにするのが、政府案なのです。

月45時間超えれば「発症」も

 さらに政府案では、繁忙期には、年間720時間の枠内で、「労災認定基準」を超えない範囲で1カ月の上限を60時間より引き上げられるようにします。

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(写真)「賃金上げて景気回復を」「雇用を守れ」とデモ行進する労働者=19日、東京都千代田区

 具体的な上限時間は今後、働き方改革実現会議で議論しますが、現在の労災認定基準は月80時間(2カ月)〜100時間(1カ月)となっており、過労死ラインぎりぎりまで容認する危険な方向です。

 過労死・過労自殺は、残業時間が月45時間を超えて長くなるほど、病気が発症する危険が高まるものです。

 厚労省の認定基準では「発症前1カ月ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる」と明記されています。月45時間を超えることの危険性を知りながら、それを上回る時間外労働を容認することは許されません。

 過労死・過労自殺を繰り返さない水準の設定こそ不可欠です。

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大企業の長時間労働を温存

 事務局案が示した年720時間という上限基準は、経団連の会長・副会長企業が結んでいる「三六協定」の多くとほぼ同水準であり、長時間労働を温存するものです。これでは実効性が問われます。

 14日の働き方改革実現会議で、経団連の榊原定征会長は、時間外労働の上限規制について、「あまりにも厳しい上限規制を設定すると、企業の国際競争力を低下させる懸念がある。企業活動の実態を十分に考慮していく必要がある」と主張しました。

 榊原氏は、1カ月の残業時間上限を100時間と検討すると報道されたことに対して、「とうていあり得ない」とした連合の神津里季生会長の発言にふれて、企業の実態にあわせて「現実的な具体案を作成すべきだ」とのべました。経団連会長・副会長企業が締結する「三六協定」の実態にあわせた水準は、許されません。

残業代ゼロ法案とセットで

 建設業や運送業、企業の研究開発部門では現在、残業時間の規制が適用除外となってますが、政府案では引き続き適用除外とすることを検討します。

 さらに、終業から次の勤務まで休息時間を保障する「勤務間インターバル制度」の法規制は見送られました。健康確保のためにEU諸国で導入されているものです。労働側が求めていましたが、経団連が反対していました。

 政府案では、安倍政権が国会に提出している、長時間労働を促進する「残業代ゼロ」法案を撤回する姿勢は示されませんでした。

 会議では、経済同友会の小林喜光代表幹事が、「残業代ゼロ」制度の導入を前提にすべきだと主張しました。

 実効性が問われる「上限規制」とセットで、上限規制を完全に外してしまう「残業代ゼロ」法案をねらうことは許されません。


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