2017年2月14日(火)
大阪「森友学園」国有地払い下げ
審議会で「大丈夫か」
財務局 リスク確認も押し切る
子どもたちに「教育勅語」を唱えさせる幼稚園で知られる大阪の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)が新設する私立小学校の用地として大阪府豊中市内の国有地が払い下げられた問題で、この土地の処分について協議した近畿財務局の審議会で、委員から「経営は大丈夫なのか」「非常に異例な形だ」など異論と強い懸念の声が上がっていたことが13日、同審議会の議事録で分かりました。
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森友学園への国有地払い下げを協議した第123回国有財産近畿地方審議会(2015年2月10日)の議事録によると財務局は、学園側から校舎の建設など多額の資金を要するため学校経営が安定するまで、土地購入ではなく借地にしたいと要望があったことを説明。当面10年間は事業用定期借地として土地を貸し、小学校の経営が軌道に乗った後、おおむね8年後をめどに、時価で土地を売却するという案を提示しました。
「覚悟あるのか」
国有地の処分は「売り払い」が原則です。異例の提案にたいして複数の委員から、学園の純資産が4億2000万円ときわめて少ないこと、学校法人法で用地は自己所有が原則となっていること、小学校の経営が失敗した場合の財産保全に問題があることなど疑問が続出。「リスクがある」「覚悟はあるのか」と強い異論が出されました。(別項参照)
財務局側は「リスクはある」と認めながら、「いろんなことを想定してこの処理スキーム(枠組み)がベストだ」と、異論を押し切る形で決定しました。
この決定を受け、近畿財務局は同年5月に森友学園と定期借地契約を締結、同6月の審議会にその事実が報告されています。
その1年後、さらに不思議なことが起こりました。資金に余裕がないため、おおむね8年後まで土地を買い取ることはできないといっていた森友学園が、すぐに土地を買い取るといいだしたのです。
本紙が入手した土地の売買契約書によると、10回の分割払いでの売却に変更していました。利息はわずか年1%で、金額にすると約587万円です。
審議会での確認では、借地契約を解消し土地売却に切り替えるさいには、時価で売却することになっていました。
売却額報告せず
この確認どおり、近畿財務局が不動産鑑定士に依頼して出した土地の評価額は9億5300万円。しかし、地下に埋まっていた廃材や生活ごみの撤去・処理にかかる費用8億1900万円を控除し、売却額は1億3400万円と決定されました。
これは、国有財産の売却価額にかかわるきわめて重要な決定です。しかし、審議会への諮問、報告はされていません。
国有財産地方審議会 国民の共有財産である国有財産の管理・処分を適正に行うための有識者による審議会。財務省の出先機関である地方の財務局ごとに設置されています。国有地など財産の処分については審議会に諮問し、その答申に基づいて利用方針が決められます。
審議会議事録から(抜粋)
2015年2月10日の第123回国有財産近畿地方審議会
N会長 今までとちょっと違った形のものだ
Y委員 もともと直ちに売買契約すべきところを猶予してある、先延ばししてある
N会長 これ私は課題がたくさんあると思う
H委員 この少子化の中で「私立の小学校を作るのでその運営主体に土地を売却する」というが、私学の小学校経営というのは本当に大丈夫なのか
H委員 今後10年で私立の小学校の経営環境はそれほど改善しないと思われるが、いざ売却する段になって、地価が上がっていて、買い手が「その価格では買えません」と言いだすリスクはないか
K委員 10年経(た)って定借延長します、しかし、さらに経営が改善されなくて募集停止になりましたというような最悪の際には、定借の期間を打ち切って国に戻すという流れになるのか。10年後には確実に戻ってくるとはいえない
N会長 基本財産というものが小さい。学校法人法では(用地は)基本的に所有するという前提。借地は、こういう国有地の場合は認められるかもしれないが、一般的には駄目で、非常に異例な形だ
Y委員 順調にいっても8年後に換価。少しつまずくとたぶん定借の延長になって10年を超えて換価できないということになる。そういう覚悟はおありか
(原文は実名。掲載にあたりイニシャルに変更)