2017年2月8日(水)
主張
「中長期財政試算」
アベノミクスの中止が不可欠
2017年度予算案の国会審議が本格化しています。17年度予算案は、軍事費を5年連続で増額して5兆円を突破、医療や介護など社会保障の予算は高齢化などによる「自然増」まで大幅に削減する一方、歳出の35%以上を国債で賄う異常な“借金漬け”の予算です。安倍晋三政権が国会に提出した「中長期の経済財政に関する試算」では、すでに1000兆円を超している国と地方の借金は今後も増え続け、安倍政権が掲げる政策歳出を税金だけで賄う「基礎的財政支出」(プライマリーバランス)ゼロは2020年度でも8・3兆円も不足する計算です。
歳入減、補正で国債増発
安倍政権になって財政が改善するどころか一層悪化しているのは、「アベノミクス」(安倍首相の経済政策)のもとで軍事費や大型開発の予算が膨らみ続け、国民の暮らしはよくならず所得税などの税収は伸び悩んでいるのに、安倍政権は国民には消費税の増税を押し付ける半面、大企業や大資産家には減税を続けてきたからです。「アベノミクス」は今や、国民の暮らしを悪化させるだけでなく、財政にも悪影響を及ぼしており、一日も早い中止が不可欠です。
象徴的なのは安倍政権が編成、17年度予算案に先立って国会で成立させた16年度補正予算(第3次)で、歳入を1・7兆円も下方修正、その分「赤字国債」を増発したことです。「赤字国債」は歳入不足を穴埋めするだけの国債=国の借金で、年度途中に「赤字国債」を発行するのは全く異例です。法人税の税収減などが原因で、まさに「アベノミクス」の破綻そのものです。
それに加え、17年度予算案でも税収はわずか1000億円ほどしか増えておらず、ここ数年3兆〜7兆円の税収増を見込んでいたのとは全く様変わりです。中でも所得税と消費税などが当初予算額で前年度(16年度)を下回っているのが特徴です。国民の所得が増え、経済が拡大を続けるならあり得ないことであり、ここでも「アベノミクス」による国民の所得の減少、消費の低迷は明らかです。
安倍政権が国会に提出した「中長期の財政試算」で、今後、国内総生産(GDP)で実質2%、名目3%以上という高い成長を見積もった「経済再生ケース」でも、「プライマリーバランス」でゼロを目指すとした20年度の歳入不足は8・3兆円と、16年度の予測より拡大すると言い出したのは、「アベノミクス」の破綻を自ら認めるものです。安倍政権は「延期」した消費税の税率10%への引き上げの19年10月1日実施を目指しており、試算はそれを盛り込んでいます。それでも大幅に歳入が不足するというのはまさに失政そのものであり、そのツケを新たな増税や社会保障の削減などにしわ寄せするのは許されません。
歳入、歳出の抜本見直し
本来、財政はムダを省いて、負担能力のある大企業や大資産家に応分に課税して賄うのが原則です。同時に国民の暮らしをよくし、経済を拡大して負担能力を広げていかなければ、税収は増えません。軍事費や大型開発のムダを広げ、大企業の負担は軽くして国民の暮らしを悪化させる「アベノミクス」はまさにあべこべそのものです。経済政策を国民本位に切り替え、歳入、歳出を抜本的転換することがますます不可欠です。