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2017年2月4日(土)

共謀罪先取りの監視

住民運動 過激視 警察、勝手な想像

岐阜・大垣署事件

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 共謀罪(テロ等準備罪)では、誰が捜査の対象となるのかを決めるのは警察です。岐阜県大垣市では、平穏な生活を送る市民たちを警察署が「過激な集団」に仕立てあげる事件が起きています。共謀罪捜査の先取りともいえる大垣署市民監視事件をみてみました。


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(写真)提訴後の記者会見で発言する(前列左から)松島、船田、近藤、三輪の4氏=2016年12月21日

 「元来、過激な運動を起こす上鍛治屋地区」「今後、過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えられる。身に危険を感じた場合はすぐに110番してください」

 これらの発言は岐阜県警大垣署の警備課課長らのもの。中部電力の子会社「シーテック」が作成した同社と同署の打ち合わせの議事録に記録されていました。

勉強会開いたら

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(写真)大垣署警備課とシー社の議事録。「過激な運動を起こす可能性」などと、平穏な住民運動を決めつけで危険視しています

 打ち合わせは2013年8月から14年6月にかけて4回行われました。シー社が計画する風力発電所建設に対する住民運動をつぶす相談です。

 建設計画に批判的だったのは、大垣市上石津町の上鍛治屋地区の自治会長だった三輪唯夫さんと住職の松島勢至さんです。2人は勉強会を開いたり、シー社に情報公開を求めることで騒音や低周波被害、日照、シカやイノシシなどの獣害などの影響を検証していました。

 ところが大垣署員は、2人について「自然に手を入れる行為自体に反対する人物」とレッテル貼り。過去にゴルフ場の反対運動に加わっていた情報をシー社と共有していました。

 さらに大垣署員は、発電所計画と無関係だった近藤ゆり子さんと、住民訴訟を多数手がける「ぎふコラボ西濃法律事務所」の名前を持ち出します。

 「このような人物とつながると、やっかい」「事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まない」「平穏な大垣市を維持したい」(同議事録)と、シー社への露骨な肩入れと住民運動を危険視します。

直接介入を狙う

 大垣署は相談のたびごとに、妄想をエスカレートさせ、松島さんらがさらに“危険人物”に仕立て上げられていきます。

 3回目の相談からは、同法律事務所の事務局長だった船田伸子さんが4人目の“メンバー”に勝手に加えられます。船田さんは3人とは友人ですが、風力発電とは無関係でした。

 松島さんと三輪さんの活動は、地元の生活環境を守るための平穏な住民運動です。

 ところが大垣署の手にかかると「今回の行動は、来年の統一地方選挙に向けて動き出した気配がある。共産党の株を少しでも上げることに利用したいのでは」などと、あたかも党利党略かのように描き出されます。

 さらに「(危険を感じたら)すぐに110番してください」と、直接介入する機会を狙っていたのです。

 シー社の議事録は、14年に報道で明るみにでました。

 被害者4人は昨年12月、岐阜県に損害賠償を求めて提訴。第1回の口頭弁論は岐阜地裁で3月8日の予定です。

 発電所計画は現在、「全面的に計画を見直す」として、中止した状態です。

 松島さんは「僕は、風力発電で生活を脅かされるのがいやなだけ。勉強会をやってよかったと思っている。警察は、近藤さんらを無理やり、引っ張り込んで大がかりなストーリーを描いている」と批判します。

 今国会に共謀罪法案の提出を狙う安倍晋三首相は「一般の人が対象となることはあり得ない」とのべていますが、野党の追及を受け、説明の矛盾が明らかになってきています。

 近藤さんは「ヘリパッド建設に反対する市民が、テレビ番組『ニュース女子』では“ある勢力の手先”のように描かれた。こうした手法が政府の常とう手段だし、事件に仕立てていくのが共謀罪だと思う」といいます。


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