2017年2月2日(木)
主張
日米経済貿易交渉
TPP前提の交渉やめるべき
アメリカのトランプ大統領が環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を正式決定し、日本などとの2国間交渉で「貿易不均衡」を是正する姿勢をあらわにするもとで、TPPを強行し、日米交渉にも応えようとしている安倍晋三政権の姿勢が危険なものであることが浮き彫りになっています。安倍首相はTPP批准をトランプ政権に働きかけるとともに、2国間交渉でもTPPで譲歩した内容を前提にする姿勢ですが、関税や非関税貿易障壁の原則撤廃などが前提では農業も経済も守れません。10日に首脳会談も予定される中、TPP前提の交渉はやめるべきです。
アメリカ第一で譲歩迫る
トランプ新大統領は就任直後、TPPから離脱することを大統領令で発表し、トランプ政権が方針を変えない限り、アメリカ、日本など12カ国で調印したTPPが発効する可能性は完全に失われました。日米などの多国籍企業やオバマ前米政権の意向を受け、TPPに固執してきた安倍政権の重大な失策です。
トランプ大統領はその代わり、日本などとの2国間交渉で「貿易不均衡」を是正し、持論である「アメリカ第一」でアメリカ製品の輸出を拡大、国内の雇用を拡大すると主張しています。日米首脳会談などでの、日米同盟最優先の安倍首相の対応が問われています。
安倍首相は国会答弁などで、トランプ政権がTPPを批准するよう「粘り強く説得する」などとTPPに固執する姿勢を見せています。一方、日米の「ウィンウィン(相互利益)の関係をつくる」などとアメリカとの対立を避け、2国間交渉にも積極的に応えるという姿勢です。日本の国益と国民の利益を堂々と主張するのではなく、「日米同盟最優先」の立場でトランプ政権の要求に応えていこうという対米追随姿勢です。
安倍首相が固執するTPPは関税や非関税障壁を事実上撤廃するなど、最も焦点となったコメ、麦、牛・豚肉など農産物の重要品目でさえ無傷なものは一つもないといわれるほど、日本の農業や経済に重大な打撃を与えるものです。その批准をあくまでトランプ政権に「説得」しようという安倍首相の態度が、TPPに不安を募らせ反対してきた多くの国民の願いを踏みにじっているのは明らかです。
重大なのは、安倍首相やその周辺がトランプ政権の求めている2国間交渉でも、TPPの関税撤廃などの原則が、物差しになる、前提になるといった考えを繰り返していることです。トランプ政権が名指しで「不均衡」の是正を求めてきたのは自動車で、アメリカ車の輸入に関税はかかりませんが、米側は品質など非関税障壁の撤廃を繰り返し求めてきた経過があります。トランプ政権の要求がアメリカの競争力が強い農産物などでも激化することが予想されます。
公正・平等な貿易ルールを
安倍政権はTPPに固執し、トランプ政権とも交渉する理由を「日米同盟」や「自由貿易」で正当化しますが、それは国民の暮らしに「ウィンウィン」の関係をもたらすどころか、アメリカのトランプ政権と多国籍企業に利益をもたらすものにすぎません。
「アメリカ第一主義」に「日米同盟最優先」で応えるのはやめ、国民の利益を主張して、公正・平等の貿易ルールを確立すべきです。