2017年1月30日(月)
ホテル客室に南京虐殺否定本
アパの元谷代表、“首相の後援者”
ホテルの全国チェーン・アパホテルは、客室に常設してきた「南京大虐殺、日本軍従軍慰安婦の否定」の本を今後も置き続けると表明しています。元谷外志雄アパグループ代表が執筆したこの本に「あまりにもひどい内容」「トンデモ本だ」という批判が高まっています。(山沢猛)
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発端は同ホテルに宿泊したアメリカ人と中国人の学生が本を読んで「中国の人はこのホテルのことを知るべきだ」とSNSに投稿し、中国国内で反発が広まったことです。2月に札幌で行われる冬季アジア大会で、選手がアパホテルに泊まる予定であることから本の撤去が俎上(そじょう)に上っていますが、同グループは「書籍設置を問題にされての書籍撤去」は考えていないと居直っています。
問題の焦点は、中国で批判が高まったことにあるのではありません。内外の人々が利用する公共性の高いホテルチェーンで、日本がアジアで行った侵略戦争を賛美する「主張」を満載した書籍を常設していることにあります。問題が起きたあともフロント正面に飾っているところがあります。
「慰安婦」も否定
この書籍は『本当の日本の歴史 理論近現代史学II』で、副題に「誇れる祖国 日本復活への提言」とあり、執筆者は元谷代表のペンネーム、藤誠志です。
内容は、「虚構の南京虐殺や従軍慰安婦の強制連行」といい「南京虐殺はなかった」といっていること。中国側がいう被害者数を攻撃することで「虐殺はなかった」というイメージを振りまくやり口をまねています。南京事件については日本政府も「日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」(外務省ホームページ)と不十分ながら認めています。
また旧陸軍将校の親ぼく団体「偕行社」が1983年、南京事件の情報提供をよびかけたときに、予想に反して元将兵から虐殺を告白する手記が多く寄せられ機関紙「偕行」に掲載されました。編集部は「中国人民に深く詫びるしかない。まことに相すまぬ、むごいことであった」というおわびを載せました。
書籍はさらに、軍閥の張作霖爆殺事件は日本の関東軍を使った「ソ連の特務機関による謀略」だとか、「中国共産党、コミンテルンの陰謀が、この泥沼の日中戦争を引き起こした」など、中国本土で15年続いた日本軍の侵略戦争の事実を逆さまに描く、とんでもない「理論」を並べています。
さらに、「日米戦争はルーズベルトの世界恐慌からの脱出策」だといい、ルーズベルトはチャーチルと共謀し日本を追い込んで「暴発」させた、「日本が真珠湾を攻撃することを知りながら」「老朽化した戦艦アリゾナに定員を超える兵員を乗り込ませ」多くの戦死者をだしたとまでいっています。
暴論の焼き直し
“太平洋戦争はアメリカの謀略”説は、靖国史観の集大成である、靖国神社の軍事博物館・遊就館でさえ展示できなくなった暴論の焼き直しです。
日本は非常時にアメリカと核兵器を共有すべきだともいいます。
元谷代表の本は安倍首相への賛美と応援で埋められています。「安倍政権が長期政権となるべく、私も最大限のサポートをしていくつもりだ」。元谷氏が首相を囲む「安晋会」の副会長をつとめていたことも明らかになっています。
米AP通信は「元谷は、安倍の声高な後援者であり、与党自民党の超保守派と結びついている。彼は複数の講演を主催し、主要な歴史修正主義者やイデオローグ、政治家を招いて講師にしている」と報じています。