2017年1月29日(日)
きょうの潮流
日本で初めて米国のジョーク(冗談)を紹介する本を出したのは福沢諭吉でした。1892年に出版された『開口笑話』。風刺とユーモアを利かせたジョークを『学問のすゝめ』の著者は、日本社会にも根付かせたかったようです▼例えば「この方が金になる」と題した小話。「教師 お前は偉い人になりたいと思って居るか 米吉 いいえ、いッそ大統領にならうと思って居ます」(原文ママ)▼約1世紀を経た1986年、同書の現代語訳版が出版されました。訳したのは劇作家の飯沢匡(ただす)さん。その書のまえがきで飯沢さんは、笑いのある政治風刺が少なくなったと嘆いています▼ユーモアかつ鋭い社会・政治批判の名作を数多く生み出した飯沢さんは、戦争や言論弾圧の体験から権力に厳しい目を向けました。ロッキード事件の最中の77年には『武器としての笑い』を出版。腐敗した政治を変えるために笑いを武器にしようとの思いからです▼日本共産党第27回大会での上智大学教授の中野晃一さんの来賓あいさつもそれに通じるものでした。「正しい、間違いないと確信していればいるほど、理解してもらうにはリスペクトの視点が必要。より広げるためにはユーモアもいります…怒っているだけの人たちには人は寄ってきません」▼この言葉、「しんぶん赤旗」にとっても傾聴すべきものです。腹が立つことだらけの安倍暴走政治。これと対峙(たいじ)する国民共同のメディアとして成長するためには、ふっと肩の力を抜いて笑いも武器にしなければ。