2017年1月17日(火)
きょう阪神・淡路大震災22年
退去強要するなんて
借り上げ住宅 行政が住民提訴
犠牲者6434人という被害をもたらした阪神・淡路大震災(1995年)から17日で22年。被災者が住む借り上げ復興住宅の退去強要問題は昨年、神戸市と西宮市が転居できない入居者にたいし退去を求めて提訴する事態に至りました。(兵庫県・喜田光洋)
「ここまでやるのか。市民を訴えるなんて、と思いました。入るときは期限なんか何も知らされなかったのに」
神戸市兵庫区の借り上げ市営住宅「キャナルタウンウエスト」2号棟の女性(73)は昨年2月、借り上げ期間満了にともなって住居を明け渡すよう市から最初に提訴されました。
歩行が困難になる難病「頚椎(けいつい)後縦靭帯(じんたい)骨化症」を患っており、転居となると長年受診している近くの病院への通院が難しくなります。そもそも引っ越し作業などとても無理です。「いくら言っても、市は聞く耳をもってくれない」と話します。
昨年5月の第1回弁論で「私は何か悪いことをしたでしょうか。みなさんの親がこの年齢で意に沿わない引っ越しをしたらどうなるか、想像してください」と、市側や裁判官を前に切々と陳述しました。
現在、この問題で神戸市と西宮市が起こした裁判は5件、訴えられた入居者は合計14人です。女性は先頭で頑張っています。
「理解されず落ち込むときもあるけど、これから期限が来る人たちのためにも必ず勝たなくては」
通知なしで
兵庫県、神戸市、西宮市などによる退去強要は、世論と運動によって、県や神戸市が年齢など継続入居基準を設け、当初の全員退去方針を変更。しかし、基準を満たさない多くの入居者や全員退去方針を変えない西宮市の入居者は転居を迫られており、継続入居のためには裁判の行方が決定的な影響を与えます。
一連の裁判の焦点は、入居時には期限があると全く知らされていないのに、入居者は借り上げ期間が終われば出なくてはいけないのか―という点です。
神戸市は、▽明け渡し請求の要件を定めた改正公営住宅法32条1項6号「借上げの期間が満了するとき」により明け渡し請求ができる▽入居決定時に借り上げ期間満了時の明け渡しを通知(事前通知)が必要とした25条2項は32条1項6号の要件ではない▽だから事前通知がなくても構わない―と主張しています。
居住権奪う
これにたいし借上復興住宅弁護団は、事前通知は、借り上げ制度を導入した改正公住法で入居者保護のために設けた制度であり、借り上げ期間満了を理由に明け渡し請求する際の厳格な要件である―と訴えています。
佐伯雄三団長は「1996年の公住法改正の国会審議で、建設省住宅局長が“借り上げ期間満了時は転居の必要があることをきちんと知らせ、承知のうえで入居していただく”と答弁している。事前通知がなく、期限だから出ていきなさいというのは居住の権利の剥奪です」と指摘。「今年中に勝利のメドをつけるために頑張りたい」と力を込めます。
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継続入居へ力尽くす
堀内照文日本共産党衆院議員
被災自治体が借り上げ住宅から退去を求めて被災者を被告席に立たせるなど、決してあってはなりません。
もともと借り上げ復興住宅は被災者支援のために作られたものです。期限が来たからと追い出すのは全くの逆行です。
私は当選以来この2年、兵庫出身の議員としてこの問題を取り上げて追い出しをやめさせるよう政府に強く求め、「一人ひとりにしっかり寄り添うことが大切」「(自治体に)丁寧な対処をお願いしたい」などの防災担当相や国交相の答弁を引き出しました。
引き続き希望者全員の継続入居のために力を尽くします。
借り上げ復興公営住宅 震災で県と被災自治体は復興公営住宅を約4万2千戸供給し、うち約7700戸をURなどから借り上げました。借り上げ契約は20年間で、15年度から順次終了。現在、県内で2811世帯が入居。