2017年1月12日(木)
米戦闘機F35Bの岩国配備
日本全国 基地強化へ
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敵レーダーの捕捉を避ける「ステルス性」に優れ、米軍や日本を含む同盟国が次世代の主力戦闘機として位置付けるF35ステルス戦闘機。このうち、短距離・垂直離着陸(SVTOL)が可能な海兵隊仕様のF35Bが近く、初の海外配備先として岩国基地(山口県)に到着します。
同基地だけでなく、日本全国の基地強化につながる重大な動きであり、監視強化・配備撤回の声を高めていくことが求められています。
●沖縄も本土も
9日(米国時間)、日本に向けて離陸した第121海兵戦闘攻撃中隊は、2012年に米海兵隊では初めてF35の運用を開始。海外配備の先陣を切ることになります。
岩国に配備される16機のうち6機は強襲揚陸艦に配備され、在沖縄米海兵隊とともに海外展開すると見られます。交代するAV8Bハリアーと同じく沖縄を拠点とする可能性があります。沖縄ではすでに、F35配備を想定して(1)嘉手納基地に格納庫・駐機場を整備(2)伊江島の離着陸訓練場を拡張(3)沖縄本島北部の訓練空域を拡大―が推進・計画されています。
これに加え、米海軍佐世保基地(長崎県)にF35Bの運用が可能な強襲揚陸艦ワスプを今年秋に配備します。また、IHI瑞穂工場(東京都)と三菱重工小牧南工場(愛知県)へのF35リージョナルデポ(整備拠点)設置に伴い、隣接する横田基地(東京都)、小牧基地への飛来も予想されます。
●爆音や事故も
推進力の強いF35の配備により、爆音や大気汚染など環境への影響が懸念されます。米国ではこれまで、配備が計画されている複数の州で環境影響評価(EIA)が実施されてきました。日本では関係自治体へのまともな説明はなされていません。
昨年10月には米本土で飛行中に出火し、最も深刻な「クラスA」に分類される事故が発生しました。事故の原因究明もままならないうちの岩国配備に、地元では不安の声が上がっています。
●開発費が高騰
F35の開発・取得は、米国が主導するJSF(統合打撃戦闘機)計画として進められています。これは既存の戦闘機のほぼすべてをF35に統一するというものです。F35Bに加え、空軍仕様のF35A、海軍仕様で空母に着艦できるF35Cがあります。
また、同盟国への売却や共同生産・共同開発も推進。昨年12月にはイタリア軍での運用が始まっています。航空自衛隊も3月から三沢基地(青森県)でF35Aの配備を開始します。
F35は、開発途上で機体トラブルが相次いでおり、今なお不具合が相次いでいます。開発の遅れで現状の調達費が2443機で計3790億ドル(約44兆円)と、米国では既に史上最も高額な航空機となっていますが、費用はさらに膨らむ見通しです。
トランプ次期米大統領は最近、ツイッターで「F35のコストは制御不能だ」と投稿し、波紋を広げています。
(竹下岳)