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2017年1月11日(水)

主張

東京五輪会場整備

混迷から抜け出す議論こそ

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 新しい年が明け、2020年の東京五輪・パラリンピックの開催まで3年と迫りました。その準備は、いよいよ待ったなしの段階を迎えています。とりわけ早期の打開が求められているのが、主要な競技会場の整備問題です。

将来をしっかりと見据え

 メイン会場となる新国立競技場は、基本設計の見直しで約1500億円に建設費を抑え、昨年着工に踏み出したものの、総工費の高騰への危惧も払しょくされていません。国と東京都の経費負担の区分、聖火台の設置、仮設席の取り扱い、五輪後の使用と維持などの課題も山積みされたままです。

 新設か既存施設の利用かで、二転三転したバレーボール、水泳、ボート・カヌーの会場は、結局、規模と経費を縮減して当初計画で進めることで決着しました。

 新たに浮上してきているのが、首都圏に分散される競技会場にかかる仮設経費をどこが負担するのかという問題です。既存施設の活用で簡素化をめざしても、相応の財政支出が避けられないのは事実でしょう。このほど千葉、埼玉、神奈川など関係10自治体が「(仮設費用は)大会組織委員会が負担するとの原則を確認してほしい」との要望を提出しており、真剣な検討が求められています。

 五輪・パラリンピックで新設される施設整備で問われているのが、将来にわたって貴重なレガシー(遺産)としてどのように維持し、スポーツの普及と向上にいかに効率よく活用していくか、という点です。

 実際に、1998年の長野冬季五輪で使用された競技施設の維持運営は深刻な事態に直面しています。「アジアでただひとつ」として貴重な施設とされてきたボブスレーとリュージュの会場「スパイラル」は老朽化が進み、改修費10億円の確保も困難な事態に直面しており、長野市は「利用の少ない施設を市税で保持するのは…」と、2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪(韓国)後の存続が危ぶまれていると報じられています。

 こうした窮状を抱えているだけに、20年東京大会の競技施設をいかに“オリンピック・レガシー”として活用していくか、自治体の過剰な負担とならないようにするためにどうするのか、整備の段階から、その対策を構築するため、知恵と力を注ぐ必要があります。

 大事なことは、現在、調整の機能を担っている国と東京都、大会組織委員会が、真摯(しんし)に協議し、長期的な見通しを示した無理のない打開策を提示することです。

 これまでの五輪でも、少なくない世界の開催都市が、競技施設の後利用問題を抱えてきました。その“負のスパイラル(連鎖)”から決別して、有効活用の展望を打ち出していくことは、東京五輪に課せられた重要な使命といえるでしょう。

総経費の削減も課題に

 昨年末、組織委員会が大会総経費の予算を招致時(約7300億円)の2倍以上となる1兆6000億〜1兆8000億円になることを明らかにしました。この経費をどれだけ削減できるかも大きな課題です。

 東京大会の施設整備問題の混迷から抜け出すうえでも、関係者の誠実な努力を注視していきたいと思います。しっかりとしたかじ取りが求められます。


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