2017年1月10日(火)
再燃“カジノ誘致合戦”
住民反対 中止の自治体も
推進派「最終的に10カ所程度」
刑法が禁じる賭博場・カジノを合法化するカジノ解禁推進法が成立したことで、全国各地のカジノ誘致の動きが再燃しています。推進派のカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟、会長・細田博之自民党総務会長)は、国内につくるカジノ施設を「当面2〜3カ所、最終的には10カ所程度」としており、このまま進めば、日本中に巨大カジノ施設が林立する事態になりかねません。(竹腰将弘)
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数千億円の施設
安倍晋三政権は6日、首相を本部長とするカジノ推進本部準備室を内閣官房に設置しました。国内のカジノ施設設置の法整備(実施法)策定作業に入ろうとしています。
このカジノ計画で想定されているのは、カジノにホテル、ショッピングセンター、劇場、国際会議場などを併設する統合型リゾート(IR)。1件当たり数千億円規模の巨大施設をつくるというもので、これを呼び込めば「地域経済活性化の起爆剤」になるという触れ込みで、各地に誘致の動きが起きています。
「推進法」強行成立への“決起集会”となった昨年12月8日のカジノ議連総会には、カジノ推進自治体の代表として北海道、大阪府、長崎県の副知事、横浜市、大阪市、佐世保市の副市長が駆けつけ、「府、市が一体となって誘致する体制を整えている」(大阪府・新井純副知事)、「ハウステンボスに投資すれば、日本で最も早く確実なIRができる」(佐世保市・川田洋副市長)とアピールし合いました。
限られた地域認定をめぐって、誘致自治体間の「争奪戦」が始まっているのです。
00年代初頭から
地方からのカジノ誘致は、2000年代初頭から各地に広がりました。
「推進法」成立で、「バスに乗り遅れるな」とばかりに、自治体首長や地方経済界が相次いで「歓迎」を表明しています。
「経済活性化や観光立国に向けた大きな一歩になった」(林文子横浜市長、12月15日の会見)、「北海道らしいIR実現に向けた大きな一歩」(岩倉博文苫小牧市長、同日のコメント)といった具合です。
愛知県常滑市など、この数年カジノ誘致が鳴りをひそめていた地域でも、商工会議所などが中心になって誘致活動を再燃させる動きも。これまでカジノ誘致についての議論がなかった山梨県では、自民党県議団が昨年12月21日、誘致の検討を県に申し入れ。福島県いわき市では、地元経済団体が誘致活動再開を目指しています。
決定的な“弱点”
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これら地方のカジノ誘致活動は、カジノに強い懸念、反対の意思をもつ住民を置き去りにする形ですすんでいるという点で、決定的な“弱点”を持っています。
カジノを「『大阪都構想』の試金石」(橋下徹前大阪市長)と位置付ける日本維新の会が同市夢洲(ゆめしま)へのカジノ設置に執着している大阪府でさえ、府民は「反対」52%、「賛成」33%(「読売」11月19日付)と答えています。
北海道小樽市では2015年4月の市長選で、カジノ反対をかかげた新人が当選、カジノ推進派の前市長を破り、同市のカジノ誘致計画を頓挫させました。沖縄県でも、仲井真弘多前知事が14年2月の県議会でカジノ誘致を正式表明しましたが、同年12月に就任した翁長雄志知事がカジノ誘致を撤回しました。
いずれも住民のなかからカジノ反対の良識の声が吹き上がった結果です。
「推進法」可決にあたって参議院の付帯決議は、地方自治体が国に認定申請するさいに、地方議会の同意を要件とし、公聴会の開催など「地域の合意形成」を求めています。住民の声を無視したカジノ誘致など許されないのです。
カジノ誘致がすすむ多くの地域で、「住民の会」がつくられるなどカジノ反対の運動が広がっています。カジノ誘致反対横浜連絡会が昨年12月24日、同市内で開いた集会には市民200人以上が参加し「カジノはいらない」というコールを響かせました。
カジノと地方自治体 カジノ解禁推進法は「地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域」に限ってカジノ施設の開設を認める「手上げ」方式をとっています。自治体が手を上げなければ話が進まないため、中央の経済団体であるJAPIC(日本プロジェクト産業協議会)が提言「地方公共団体にとってのカジノ実現の手法」を示すなど、早くから地方を巻き込み、各地に誘致運動を広げてきました。
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【誘致を正式表明している自治体】
(1)北海道、(2)釧路市、(3)苫小牧市、(4)留寿都村、(5)横浜市、(6)和歌山県、(7)大阪府・市、(8)泉佐野市(大阪府)、(9)長崎県・佐世保市
【民間などにカジノ誘致の動き】
(10)秋田市、(11)千葉市、(12)成田市、(13)東京都、(14)熱海市(静岡県)、(15)常滑市(愛知県)、(16)鳥羽市(三重県)、(17)珠洲市(石川県)、(18)鳴門市(徳島県)、(19)宮崎県、(20)山梨県、(21)いわき市(福島県)
【いったん誘致表明後撤回の自治体】
小樽市(北海道)、沖縄県